00290_「外国でいつのまにか訴訟を起こされて敗訴したケース」でも、諦めず、しぶとく粘ってみると、「意外と何とかなる」可能性があること

民事訴訟法118条は、同条に規定する1号ないし4号の要件を満たす場合にのみ、外国裁判所の確定判決が効力を有すると規定しています。

そして、同条2号前段は、外国裁判所の確定判決が効力を有するための要件として、
「敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く)を受けたこと」
を規定しています。

したがって、外国裁判所の確定判決は、そのまま日本でも有効となるというわけではなく、同条1号ないし4号に規定された要件を満たした場合にのみ、日本で有効となり、執行される可能性が出てくるのです。

では、
「訴訟の開始に必要な呼出し」(同条2号前段)
とは、どういったものをいうのでしょうか。

日本国内で外国の訴状を受け取る場合として想定されるのは、
1 外国の原告やその代理人から直接訴状が郵送もしくは持参されて届く場合
もしくは
2 日本の裁判所を通じて訴状が届く場合
です。

このうち、
「訴訟の開始に必要な呼出し」
があったと認められるのは、2の場合のみです。

香港で行われた訴訟の原告から私的に依頼された弁護士が、日本に在住する被告に訴訟書類を直接交付したケースにおいて、最高裁判決(平成10年4月28日)は、
「香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者がわが国でした直接交付の方法による送達は、民事訴訟法118条2号所定の要件を満たさない」
と判断しました。

すなわち、最高裁判所は、
1 外国の原告やその代理人から直接訴状が郵送もしくは持参されて届いた場合
には、
「訴訟の開始に必要な呼出し」
があったとは認めないわけです。

こういう状況ですと、
「外国でいつのまにか訴訟を起こされて敗訴したケース」
で、諦めず、しぶとく粘ってみると、アウエー戦で負けても、ホームである日本でのリターンマッチで一から争えることも期待でき、その意味で、意外と何とかなる可能性がある、ともいえます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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