00333_日本企業法務史(7)新しい資本市場・「売り買いされ、あるいは解体される企業」

冷戦終結に伴い、市場が1つになりました。

ロシア、東欧諸国、中国など
「社会主義体制崩壊に伴い、資本主義社会に大量に移転しきた、“新興国”」
が大量の生産と供給を始めたことにより、
「世界の工場」
と呼ばれていた日本の地位が脅かされるようになりました。

すなわち、
「それまで日本でしか作れなかった一定の価格と品質をもった商品」

「賃金の安い新興国が、一定程度の品質の商品を驚くような低価格で供給するようになったこと」
に伴い、供給過剰と価格面の過当競争を誘発し、これが構造的なものとなっていったのです。

世界レベルでの供給過剰とこれに伴い発生した構造的デフレーション(経済収縮)により、国際的な大競争(メガコンペティション)が到来しました。

同時に、資本市場もグローバル化していきます。

バブル崩壊後、疲弊著しい日本には、参入の好機とみた外資が大量に参入してきました。

新たに日本の資本市場へと参加してきた外資系プレーヤーたちは、企業価値を時価によって正確に計測することを求めるとともに、様々な財務指標を持ち出し、保有資産の有効活用を強硬に求めました。

経済がインフレ(膨張)からデフレ(収縮)へ向かい、企業業績も株価も不動産もどんどん下がり始め、
「さしたる努力をしなくても、含み資産はあるし、モノは売れるし、企業業績が右肩上がり」
という神話が崩壊し、経営陣は安穏としていられなくなりました。

このような状況において、それまで取引主体でしかなかった企業そのものが
「売り買いの対象」
となる事態が生まれるようになりました。

市場が収縮し、また“護送船団”が解体していく中で、業界を再編する動きが活発化し、
「友好的なM&Aを行って企業を丸ごと買い上げる」
さらには、
「敵対的買収によって、企業を解体させたり、あるいは経営陣を交替させたり」
といった動きがいよいよ現実化してきました。

ここに至って、企業は、取引の
「主体」
として永遠の存続を約束された存在ではなくなり、
「単なる売り買いの対象」
としてみられるようになりました。

経営努力をしなかったり、含み資産を持ちながらもこれを積極的に利用しない企業や、財務指標改善やIRに意を払わず株価を割安の状態で放置させているような企業は、経営陣の交代を要求されたり、身売りさせられたり、解体を強制されるようになったのです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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