00356_違約金の種別と、効果と、契約記載テクニック

「違約金」

「制裁金」
「ペナルティ」
という言葉は、ビジネスの世界でもよく耳にしますが、その実際の意味について正確に理解している方はあまり多くないように思われます。

それもそのはず、
「違約金」
という言葉は、
「債務者が債務不履行の場合に、債権者に対して給付することを約束した金銭」
などと説明されるものの、実際には、次のように
1 予め定められた損害賠償額(損害賠償額の予定)
2 実際の損害のほかにプラスαで課される制裁金(違約罰)
などなど、多種多様な意味で用いられる、いわば
「玉虫色のマジックワード」
なのです。

これらは、それぞれ似たようなものに見えるかもしれませんが、
「1 損害賠償額の予定」
の意味であれば、実際に発生した損害額がいくらであるかとは無関係に予定額の賠償しか請求できないのに対し、
「2 違約罰」
の意味であれば、当該金額の請求に加えて、別個に、実際に生じた損害額の賠償をも請求できます。

このように
「たかが言葉一つ」
とはいえ、解釈によって、時に巨額の差を生み出します。

民法は、
「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合においては、裁判所は、その額を増減することができない」(420条1項)
と規定し、
「1 損害賠償額の予定」
に拘束されます(ただし、法外に高額または低額の予定をすると公序良俗違反として無効にされることがあるほか、利息制限法などの特別法による規制もあります)。

その上で、同条3項は、
「違約金は、賠償額の予定と推定する」
と規定し、
「違約金」は、(推定を覆すような)特段の定めがない限り、「2 違約罰」ではなく「1 損害賠償額の予定」として解釈されるべし、
というデフォルトルールを決めています。

したがって、契約書の中に特段の説明がなく
「違約金」
とだけ書かれた約定が存在する場合、損害賠償を請求する側は、この推定を覆さない限り、実際に発生した損害額が予定額を上回ったとしても、予定額しか請求することができません。

予定額以上の損害を請求するには、あらかじめ契約書の中で、
「違約罰として○○円を支払う。ただし、甲はさらに契約の履行を請求し、あるいは実際に生じた損害の賠償を求めることができる」
等と定める必要があるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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