00386_TOBに最後まで反対する株主が残存した場合の対処法

会社法は、例えば取締役を選任する場合や新たに株式を発行する場合など、会社における基本的な事項を決めたり変更したりする場合には、一部の例外を除き、議決権の過半数をもって決することとしています(資本多数決の原則)。

もちろん、反対する株主であっても、一度、多数決が採られた以上、これに従わなければなりません。

しかしながら、
「常にかつ絶対的に多数決原理が優先され、反対株主(少数派株主)は、いついかなるときでもこれに従い続けなければならない」
というルールがまかり通れば、多数派が企業価値を下げるような不合理な多数決に及んだ場合、反対株主にとってあまりにも不当な結果を招来しかねません。

そこで、会社法は、株式の権利内容を変更したり、重要な事業を譲渡する場合など、株主権の変更や会社の重要事項の変更を伴う決議に反対する株主について、会社に対して自己の株式を
「公正な価格」
で買い取ることを請求できる権利を付与する旨の規定を設けています。

そして、このような株式買い取り請求があった場合、会社は反対株主と株式の買い取り価格に関する協議を行うこととなります。

しかしながら、反対株主側とすれば1円でも高く買い取って欲しいし、会社側とすればなるべく安く買い取りたいところであり、実際は、互いの利害が相反し、なかなか協議が進みません。

そこで、会社法は、30日以内に当該協議が整わない場合には、会社または反対株主からも申し立てにより、裁判所は、会社の資産内容、財務状況、収益力、将来の業績見通し、直近の株価などを総合的に考慮し、
「公正な価格」
を決定することとなります。

これまで、設例のような投資ファンド主導による企業買収のケースにおいて、個人株主等の少数株主が、意に反して予想外に安い価格での株式売却を迫られ、泣き寝入りすることが多かったようです。

しかしながら、昨今では、個人株主がインターネットを通じて同じ立場の個人株主を探し出し、被害者の会を結成するなどして、会社側が提示した株式の買い取り価格に集団で反対を表明したり、場合によっては、前記のとおり、裁判所に対し、株価を決定する手続を申し立てたりするケースが出始めており(旧カネボウ株式買い取り価格決定事件、レックス・ホールディングス株式買い取り価格決定事件など) 、今後、このような傾向が顕著になることが予想されています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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