00433_「嘘つき」「ホラ吹き」「誤魔化し」がことのほか厳しく罰せられる金商法の規制環境

金商法の規制の大きな柱のひとつが、資本市場(株式・社債市場等)への正しい情報提供であり、
「資本市場を用いて金融を行う企業の価値が、必要十分な正しい情報に基づいて評価される環境」
をつくるため、さまざまな規制や罰則が設けられています。

金商法は、上場企業、すなわち
「資本市場という社会インフラを利用して多数の投資家らから資金を調達する株式会社」
に対しては、有価証券報告書等の継続開示書類の提出を義務付けるとともに、その内容の正確性を担保するために、不実の記載に関する民事上の責任(投資家が蒙った損害に対する賠償責任)・行政上の責任(課徴金)のみならず、重要な事項につき虚偽の記載をした者については、
「10年以下の懲役、1千万円以下の罰金、またはこれらの両方」
の刑事罰を定めています(同法197条1項1号)。

「法定刑の上限が懲役10年」
というと、窃盗や詐欺と同等ということですから、犯罪の相場としては、相当重い部類に入ります。

金商法違反となる粉飾決算に対する刑事罰については、非常に厳しい運用がなされており、報道を見ても、
「執行猶予が付かず、実刑となり、そのまま刑務所に収監されることになった事案」
が複数確認されます。

2011<平成23>年4月には、粉飾決算したライブドア社の元社長に対する懲役2年6月の実刑判決が確定していますし、2011<平成23>年9月、循環取引によって売上高や経常利益を水増しして虚偽の有価証券報告書を提出したシステム開発会社の元会長に対する横浜地裁の裁判でも、懲役3年の実刑判決が下されています。

上場企業の経営者の中には
「ちょっとウソついたくらいだから、大目にみてくれよ」
などという考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「資本市場の金融インフラとしての重要性に鑑みれば、投資家の判断を損ね、市場への信頼を傷つけるような不心得者に対しては、厳しい処罰をもって臨む」
というのが今や常識になっていますので、注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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