一般に、企業の1年間の活動実績を計測する
「企業会計」
では、法人の1会計年度における
「収益」(売り上げ等)
から、それを得るために掛かった
「費用」(売上原価や販売管理費等)
を差し引いて、
「利益」
を算出することになります。
これに対し、企業の
「担税力」
を計測する
「税務会計」
では、上記の
「利益」と「収益」
に対し、公平な課税目的やさまざまな政策に鑑みた各種の調整を行うことになります。
このような調整を行った後の
「収益」
を税法上は
「益金」
といい、調整を行った後の
「費用」
を
「損金」
と呼びます。
そして、法人税は、大まかいうと、
「益金」
から
「損金」
を差し引いた
「所得金額」
に所定の税率をかけることで算定されますが、少しでも法人税を安くしたい企業にとってみれば、いかにして
「損金」
の額を多くにするかについて苦心することになります。
個人が個人に対し金銭等の贈与を行う場合、金銭等の贈与を受けた側(受贈者)には贈与税という税金が掛かりますが、金銭等の贈与を行った側(贈与者)には贈与税は掛かりません。
これに対し、企業などの法人が、特定の法人に対し金銭等の贈与を行う場合、まず、金銭等の贈与を受けた側(受贈者)は、法人の純資産がそれだけ増加しますので、前記の
「益金」
として扱われ、法人税を算定する対象となります(受贈者が個人の場合は、原則として、法人からの贈与は一時取得として所得税の対象になります)。
他方、金銭等の贈与を行った側(贈与者)ですが、個人への贈与の場合も法人への贈与の場合も、
「損金」
として算入することが制限されます。
この結果、課税される額も大きくなります。
なぜなら、企業などの法人による贈与等を
「損金」
として無制限に認めてしまうと、
「損金」
を自由に大きくして税金の支払を回避することを許してしまうことになります。
そこで、法人税法は、このような贈与等を
「寄付金」
として、
「損金」
として算入することに一定の制限を設けています(法人税法37条以下)。
なお、個人や法人への
「金銭債権の免除」
といった“消極的な”贈与も、前記と同様の考えから、債務者の資産状況や支払能力等からみてその全額を回収することが不可能であることが明らかな場合などを除き、
「損金」
への算入が制限されています(法人税基本通達9-6-1、同9-6-2)。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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