00469_採用内定検討にあたっての調査の自由

企業には、採用する、採用しないの自由がありますが(採用の自由)、前提として、採用を判断するための情報を入手することも、原則として自由であると考えられております(調査の自由)。

例えば、三菱樹脂事件最高裁判例は、
「採用にあたって、思想や信条といった、人の能力には関係がない、内心的なことを調査し、調査の結果を理由に採用を拒絶することも、当然には違法ではない」
と判断しています。

企業にとって、健康的、継続的に勤務してもらうことを目的として、採用希望者に対し、健康診断を受けさせたり、診断書を提出させることも許容されると解されています。

健康診断を受けさせて、その健康状態を調査した上で採否を検討するというのは、病歴の内容いかんによっては、労働能力に影響を与えたりもしますので、
「“調査の自由”を行使した」
といえなくもありません。

ただ、いくら
「調査の自由」
が認められるからといって、無制限な調査が許されるわけではありません。

本来の必要性を超えて、単に“興味本位”で調査を実施する、というのはご法度です。

病歴や持病の種類によっては、センシティブな問題をはらみます。

健康情報を調査・取得する場合、
「本人の同意」
と、調査の必要性が不可欠となります。

実際、採用にあたっての調査で、採用候補者に無断でB型肝炎ウィルス感染の調査をしたことがプライバシーを侵害するものとして、企業に対し慰謝料の支払を命じる判決が出ています(東京地裁2003年6月20日判決)。

例えば、本人に内緒で検査を行っているような場合、その時点で違法と判断される可能性があります。

敗訴しても慰謝料額自体はわずかでしょうが、たちまち
「ブラック企業」
という噂がたち、新卒採用に誰も応募しなくなるので注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです