00478_循環取引のリスク

「循環取引」
とは、俗に、実際には商品を動かさず、伝票上だけで売買を繰り返し、複数の企業間で転売していく取引のことをいい、最終的に商品は最初の企業に戻ってくる点に特徴があります。

このような
「循環取引」
は、実際、放っておけば劣化してしまう在庫を売買することで売上高を伸ばすことができますし、自分が売却した商品を、再度、購入するまでの間(循環してくるまでの間)、短期的に資金を確保することができますので、商品代金を他の借入金の返済に充てることなどもできます。

さらには、売上高が増せば、
「将来性のある企業」
と評価され、銀行融資を受けやすくなる場合も考えられます。

このようなメリットがあることから、
「循環取引」
は、同じ業界内で在庫と資金の保有比率を適正に維持する商慣行の1つとして行われることが、ままあるわけです。

それに、商品の転売行為自体を直接的に違法とする法令はありませんし、
「循環取引」自体
を取締まる法的根拠もありません。

しかしながら、特に、証券取引所に株券を上場しているような企業の場合、投資家は、適正な事業活動によって企業が成長していると理解した上で投資判断を行うわけですから、単に、伝票を数社間で“廻す”だけのような取引実態を伴わないような
「循環取引」
で売上高を過大に計上していたのであれば、投資家にとってみれば、“騙された”ということになりかねません。

したがって、このような投資家の信頼を保護する必要がありますので、金融商品取引法は、
「資本市場(株式市場等)への正しい情報提供」
を確保するために、さまざまな規制を設けているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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