00576_「訴訟上の和解」交渉における「最重要プレーヤー」たる裁判所を味方につけるテクニック

和解とは最後は当事者双方が納得しなければならないものなのですから、裁判所は勧告したり助言したりするだけの立場に過ぎません。

ですが、裁判外の和解と異なり、訴訟手続の和解となると裁判所は極めて重要な役割を果たしますので、相手方を説得する以上に裁判所を味方につけて裁判所を通じて交渉を動かしていくことが重要になってきます。

すなわち、和解は原被告当事者だけの問題ではなく、裁判所も
「和解か判決か」
という事件の帰趨に大きな利害と関心をもっており、このため、裁判所は和解の運営には大きな役割を果たします(平たくいえば、かなり強くお節介を焼いてくれます)。

そもそも裁判官は、民間企業の営業達成ノルマなどと同じように、
「多数の手持ち事件の迅速で適切な解決」
というノルマを上から課され、当事者以上に重圧を抱えています。

ここで
「解決」
と書いたのは意味があります。

すなわち、裁判所にとって、和解であろうが判決であろうが
「事件の解決」
となり、こなした仕事としてカウントされるようなのです。

そうした状況にあって、
「和解をしてくれたら判決を書く手間が省ける」
という意味で、和解は
「大幅な作業負担から解放される解決形態」
としてどの裁判官からも歓迎されます。

加えて、判断が微妙な事件の判決となると、裁判官も神経を使いますし、自分の判断が上級審でひっくり返されると
「判断を誤って当事者に迷惑をかけた」
という意味で、非常にイヤな気分にさせられますし、出世にも響く可能性もあります。

また、裁判官は和解を勧めるに大きな権力をもっています。

すなわち、
「ここで和解に協力しないと、あんたに不利な判断をしちゃうよ」
という隠然たるパワーを匂わすことができるのです。

この空気を読めないと、有利なはずの事件で逆転で負けることだって起こり得ます。

以上のとおり、和解を有利に進めるためには、相手をどう譲歩させるか以上に、裁判官をどう動かすかという点に注力すべきであり、裁判官の態度如何で解決の有り様が大きく変わる場合があります。

被告側の弁護士としては、
「原告の主張に対する有意なケチ・難癖」
を様々につけて、裁判官に対して
「判決となると微妙な判断になるし、高裁にもってちゃうかもしれないよ」
ということをソフトにアピールしつつ
(裁判官は恫喝を嫌いますので、間違っても機嫌を損ねてはなりません。
「こんなもん、払えるか、ボケ」
「裁判なんてナンボのもんじゃい」
「判決上等じゃい上にもっていったるさかい、やれるもんやったら、やってみんかい」
「公僕風情が納税者に向かってエラそうに何いいさらしとんねん」
みたいな態度は絶対禁物です)、
「私としても和解で解決したいんで、強硬な相手を説得してくださいよ」
と裁判官を味方につけるような形で和解手続を進めることが重要になってきます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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