本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース6:トップの公私混同取引が発覚した!をご覧ください。
相談者プロフィール:
株式会社コンドー商事 代表取締役 甲子 昆堂(こうし こんどう、84歳)
相談概要:
家電量販店をチェーン展開する会社を一代で築き上げ、東証一部に上場するにいたった相談者は、社外取締役をつとめる別会社が所有している土地を借用しています。
メーンバンクが送り込んできた社外取締役の弁護士から、
「会社法に違反しているから、会社を代理して訴える」
といわれました。
相談者としては、納得がいかず、
「今までは自分がすべての取引を決裁してきたし、それについて問題視する者は誰一人いなかった。小さな取引に、いちいち取締役会を開くことこそ無駄。 新参の社外役員に『会社法違反だ、訴える』と急にいわれても」
と、憤っています。
以上の詳細は、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【事例紹介編】をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 未上場企業はやりたい放題!
創業者が100%の株式を所有している未上場企業においては、基本的に、きちんと利益を出している限り、オーナー社長はやりたい放題です。
会社の資金繰りが厳しくなれば代表者個人の財産から会社の決済に必要なお金を融通してもらいますし、自宅賃料や税金の支払いなど個人的な使途に充てるために代表者個人が会社のお金を借りることもフツーに行われています。
銀行から事業資金を借りていても、きちんと儲けて返済さえしていれば、銀行もとやかく口を出すことはありません。
以上の詳細は、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【未上場企業はやりたい放題!】をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 上場したら無視できない「利益相反取引規制」
会社法においては、取締役は株主に対して
「善良なる管理者( “自分の利益を犠牲にしても尽くす立場”を表す法律用語)」
として
「会社の私物化につながるような、自分や関係者の利益を優先しがちな取引」
を原則として禁止するとともに、実行する場合には取締役会において議論し承認をさせる取り扱いとし、賛成取締役には
「(そのような危険な取引において万が一会社に損害が生じた場合)ケツを拭かせる」
という
「利益相反取引規制」を定めています。
前述した
「創業者が100%の株式を所有している未上場企業においては、オーナー社長はやりたい放題」
とは、
「(取締役全員のクビをすげ替える権限を有する)株主全員がその場で承認している以上、取締役会においても文句いえるやつはいない」
という趣旨において、利益相反取引の逐一の承認が不要とされることを意味します。
ところが、上場して、(たとえ特定株主が実質支配しているとはいえ)少数株主が厳然と存在する場合には、利益相反取引規制は厳しく作用することになります。
以上の詳細は、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【上場したら無視できない「利益相反取引規制」】その1、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【上場したら無視できない「利益相反取引規制」】その2をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 利益相反取引規制違反のペナルティやリスク
利益相反行為が取締役会の承認なく行われた場合、その取引は無効(法律上効力を有しない取引)となります。
所定の取締役会承認手続きを経由せず利益相反取引を敢行した取締役は、
「任務を怠った」
と推定され(会社法423条3項)、原則として、会社の被った損害を賠償しなければならない立場に追い込まれます。
規制に違反した場合には、民事上の責任のみならず、
「特別背任罪」
という刑事罰を受け、
「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」
に処される可能性があり、懲役と罰金を併科されることもあります。
以上の詳細は、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【利益相反取引規制違反のペナルティやリスク】をご覧ください。
モデル助言:
相談者は会社法の規制に違反しており、賃貸借契約は無効、会社に生じた損害は弁償する必要があります。
加えて、この話が公になれば、取引所からお叱り、マスコミやネット掲示板でバッシング、株主総会で質問攻め、さらには株主代表訴訟といった事件に発展し、取締役の立場から引きずり降ろされることにもなりかねません。
さらに、特別背任罪に処される可能性もあります。
自身の置かれた状況をきちんと理解し、早期に社外取締役の弁護士と話し合って、あまり大事(おおごと)にならない処理スキーム(上場企業である以上、開示規制その他はきちんと守らなければなりませんが)を検討してはいかがでしょうか。
以上の詳細は、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【今回の経営者・甲子(こうし)社長への処方箋 】その1 、ケース6:トップの公私混同取引が発覚した!【今回の経営者・甲子(こうし)社長への処方箋 】その2をご覧ください。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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