00679_法務外注の基本思想:「社会人の仕事」と「学生の勉強や試験」との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」という点

企業内に生じた法務サービスについては、法務部が内製化して自力で完遂すべきでしょうか?

それとも、顧問弁護士等の社外専門家に外注した方がいいのでしょうか?

でも、社外に外注するのであれば、法務の仕事は、外注管理ということになり、であれば、
「弁護士という圧倒的に優秀なスキルを保持するサービス提供者の腰巾着か太鼓持ち」
ということになり、
「顧問弁護士がいれば、横でくっついている金魚の(中略)みたいな法務部不要」
という社内世論が出てくるのではないか?

やはり、
「法務部が、企業内に生じた法務サービスに応えられないので、外注する」
という恥ずべき事態は何とかすべきであり、たとえ失敗したり、素人考えの素人仕事であっても、がんばって自力処理するべきではないか?

こんな疑問が生じる前提として、
責任ある自立した社会人として、目の前の課題に背を向け、安易に外のプロにカネを払って済ませる、という事自体、無責任で不誠実の極みであり、人として、社会人として、歯を食いしばって何とか頑張るべきではないか?
という根源的な疑義が存在し、これについてどういう考えをもっておくか、きちんと整理しておくべき必要があると思われます。

まず、押さえておくべき、確認しておくべく基本的な思想としては、
「社会人の仕事」

「学生の勉強や試験」
との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って
「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」
という点です。

学生時代においては、勉強や調べ物や宿題やレポートはすべて自力でやり遂げるべきものであり、
「家庭教師にカネを払って代わりにやってもらう」
などということは言語道断であり、また、試験でカンニングしたり、替え玉に受験させたりするのは、犯罪行為とされます。

しかしながら、社会人が仕事を進める上では、
「『自分たちだけでやり遂げる』ことにこだわり、ロクに知識もない素人が何ヶ月かけてグズグズ議論する」
という方が給料の無駄であり、会社にとって有害です。

そういう無駄で有害な発想ではなく、むしろ、
・課題解決はすべて内製化して自力で行うというドグマを排して、外注という資源動員上の選択肢をきっちりもっておくこと
・迅速かつ適価にて、外部のプロから必要な資源を調達すること
・外注については、目的達成まできっちりフォローすること、すなわち外注管理(予算管理、品質管理、納期管理、使い勝手管理)をすること
の方が、本当の仕事のあり方(付加価値の創出)として求められます。

法務部や総務部に配属される方は、どちらかというと生真面目な試験秀才タイプが多く、
「“仕事”と“お勉強”の違いがわかっておらず、法務リスク管理という純ビジネス課題を学究課題と勘違いし、時間がかかっても自力で調査する」
という無駄で非効率な方向性に向かいがちです。

無論、自力で正しい解決に辿りつければいいのですが、情報や経験の不足から、方向性を誤り、
「時間をかけた挙句、仕切りをミスって、会社に大きな迷惑を被らせる」
という悲惨なチョンボをしでかすこともままあります。

法務リスク管理というお仕事、すなわち、
「法令に関する専門的知見に基づき、発見特定されたリスクをうまいこと処理して、大事にならないように仕切る」
という課題処理は、要するに、
「弁護士その他の専門家という“外注業者”をいかに上手に、適価で使い倒すか」
という点がポイントになります。

無論、最終的な社内ジャッジをする際には法務部等の社員プロパーの仕事になるとしても、ジャッジに至るまでの大部分の情報は外注処理で賄えば足りる話です。

バカもハサミも弁護士も使いようです。

「学生時代の勉強のように、カンニングや替え玉受験なしで、自力でなんとかしなければ」
と考えて無駄なストレスを抱え込むことなく、外注業者をうまく使いこなすことにより、ラクに、楽しくこなせる仕事にすることができるのです。

そのためには、予算と要員資源動員の権限をもっている経営者とうまくコミュニケーションすべきです。

そして、外注がうまく、スムーズに機能するように、経営者の法務リタラシーを改善して差し上げるべきです。

しかし、経営者にとっては、法務のことは全くわかりませんし、判断材料としての資料も「象形文字」のオンパレードです。

経営者とコミュニケーションを取る際、「(経営者にとってみれば)誰も理解できないどこか遠くの国の部族のコトバ」ともいうべき法律用語等を、咀嚼をせず、そのまま役員の前で披瀝するのはやめるべきです。

そして、その種のリタラシー改善や役員の方々にうまいこと説明をしてこの課題を前に進めたい、というときには、手伝ってくれる弁護士を常に複数リソースとして確保しておくべきです。

本当にいい外注業者は、社内担当者が外注起用を行う際、手伝ってくれるものです。

能力や実績やスキルを保有していることは当然の前提として、そういう、
「本当に使える、役に立つ、外注業者たる弁護士」
を選定し、リテインしておくべき、といえます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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