00709_契約書のチェックの段取りと実務その6:契約書作成のルール

契約書というと、甲とか乙とか古めかしい言葉がいきなり出てきて、全体的に漢字や文語調の言い回しが多く、高度で専門的な言語能力がないと作成できないのではないか、という印象がお持ちの方も少なくないと思います。

ですが、結論を言いますと、契約書のつくり方や言い回しには特段の決まりがあるわけではありません。

強いて言えば、
「約束の内容が明確に記載してあり、読んで何が書いてあるかわかる程度の文書であれば、何でもOK」
という極めてユルいルールがあるだけです。

契約は口頭でも成立するものです。

その意味では、契約“書”は、契約成立の絶対条件でもなんでもなく、
「あってもなくてもいいが、あったら、後からモメるのを防げる」
という任意の証拠に過ぎません。

ですから、
証拠として使える程度のことが書いてさえあれば問題ない、
といえるのです。

したがって、
「甲、乙、丙」でなくて「A、B、C」でも問題ありませんし、
すべて平仮名で書いても大丈夫ですし、
丸文字を使ってギャル語丸出しの契約書もOKです(ただ、「約束の内容が明確に記載してあり、読んで何が書いてあるかわかる程度の文書」である必要はあります)。

契約書に用いる紙も、コピー紙である必要はなく、わら半紙でも、紙ナプキンでも大丈夫(新聞紙にマジックで書くとさすがに書いてある内容が判りませんので問題があります)。

実際、暴力団関係者とモメ事が起こった場合、暴力団関係者から
「ファミレスで書かせた紙ナプキンの示談書や念書」
といった文書が提出されたりします。

このように、契約書は、甲でも乙でもAでもBでも同じであり、漢字を使おうが丸文字を使おうが関係なく、わら半紙に書こうがトイレットペーパーやティッシュペーパーに書こうが構わないのですが、裁判になったときに証拠として機能するものですから、この点を意識しておく必要があります。

すなわち、裁判官が読んで理解・認識することが前提になっておりますので、
「契約書の体裁にルールはない」
といっても、裁判官が妙な印象を抱くような契約書を作った場合、せっかく作った証拠が機能しなくなる危険はあります。

例えば、
わら半紙に丸文字でギャル語全開のM&A契約書や、
1億円の損害賠償債務を承認する紙ナプキンの念書
が証拠として出されても、裁判官の理解の範囲を超え、
「これは契約の証拠ではなく、タチの悪い冗談か何かだろう」
と判断される可能性があります。

その意味では、時間と手間の許す限り、取引価額に比例してきっちりとした内容の契約書をつくっておくべきことが推奨されます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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