法的な観点で契約事故・企業間紛争を防ぐ合意内容としては適正であっても、当該契約締結の結果、会計上、税務上の不都合が生じる場合があります。
例えば、物品販売の場合、委託方式か買取方式かによって売り主・買主のどちらが在庫を負担するかが変わってきますし、資産譲渡の価格の決定如何によっては税務上低額譲渡等と認定され、思わぬ課税がなされることもあります。
さらに、M&AやSPCを用いたオフバランス取引等を実施する場合も、
「適格要件充足判断において企業組織再編税制の活用が可能か否か」
や
「税務上オフバランスと判断されるか否か」
を実例に即して具体的に検証しないと、取引そのもののゴールが達成されない場合もあります。
その意味で、契約書を作成する前に、依頼部門に税務・会計上の検討を了したか否かを確認するとともに、必要に応じて、財務責任者や税務担当者らを招集して、取引組成が税務上あるいは会計上のゴールを達成するに十分な適格性を有するか否かを厳密にチェックすべき必要があります。
なお、 零細企業や地方の中小企業でよくみられるのは、税理士が主導して、
「税務的な整合性『だけ』しか考えておらず、法的にはデタラメな契約処理」
がなされている例が散見されます。
そして、このような
「法的にはデタラメな契約処理」
が仇となって、致命的な法的窮地に陥るケースもあります。
当事者同士の仮装の契約であっても、デタラメなはずの契約内容が独り歩きし、「善意の第三者」が登場した途端、民法94条の虚偽表示として無効等々の抗弁をしたところで、通用しない場合もあります。
いずれにせよ、会計・税務・法務すべてにおいて整合性を維持する契約処理を目指すべきです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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