00893_正解も定石も不明なプロジェクトを推進するためのチーム体制を整える1:チーム理念

「正解も定石も不明なプロジェクト」
を推進するためには、陳腐な常識にとらわれず、かといって、野蛮で無謀にも陥らず、本当の意味での知性と冒険心とタフなメンタルが必要です。

まず、チームを統合するための理念や哲学、という点においては、気持ちや感情や情熱だけでは不十分です。

むしろ、気持ちや感情や情熱が過多となると、知性を減退させ、感受性を鈍らせ、思考の柔軟性や、経験の開放性や、新規探索性を低下させかねません。

その意味で、大事なのは、
「ロマン」
より
「ソロバンとサイエンス」
です。

すなわち、チームをドライブするのは、
ソロバン=経済的動機によるエンジン(カネと欲と競争により物事を前に進める経済システム)と、
サイエンス=論理と合理性を前提に、メンバーの士気を秩序立て、組織を有機的に結合し、集団のメリットを活かすための管理という制御機構(可視化と測定を前提とする科学と合理性)
です。

ソロバンというか、ゲーム・ロジックは絶対必要です。

人間の欲望にきちんと向き合って、これを合理的に制度化・システム化して、組織運営原理に取り込むことをしないと、大義名分やキレイごとや建前だけでは、組織は維持できません。

また、勘や経験や常識やインスピレーションではなく、サイエンスによる組織運営も重要であり、必要です。

前提が
「正解も定石も不明なプロジェクト」
ですから、経験も常識は通用しませんし、出鱈目、適当に勘や霊感でやっても無理です。

効率的な試行錯誤を繰り返し、より正解に近い最善解・現実解、あるいは一番マシな不正解を探り当てる、という営みです。

最もベターな選択肢にたどり着くためには、論理的・合理的・サイエンティフィックに試行錯誤や消去法を試みるほかないのです。

「このような理念ないし哲学を理解し、その価値を共有できる」
という、一定の知性や教養を前提とする倫理観をもつことがチーム構成員に求められます。

戦前の大本営には、ソロバンやサイエンスが欠落してロマンしかなく、気持ちや感情や情熱が過多となって、思考の柔軟性も、経験の開放性も、新規探索性もありませんでした。

「勝ちたい」
「負けたくない」
というエンジンはあったものの、
「競争を秩序立て、組織を有機的に結合し、集団のメリットを活かすための管理という制御機構(可視化と測定を前提とする科学と合理性)」
というハンドルやギアやブレーキといった類のものは、
絶望的に不足(あるいは欠如)していました。

大本営で働いてた方々は、皆、受験偏差値は高く、相応に有能でしたし、中には、知性と教養と思考力と冷静さを持った方もいたのでしょうが、結局、チーム全体の理念や哲学として、
「正解も定石も不明なプロジェクトを推進するためのチーム」
としては不向きであったため、壊滅的な惨敗をしでかしました。

企業においてよくみられるのは、情熱過多・知性貧弱なオーナー経営者がチームのトップとなると、
ソロバンが欠落してロマンしかなく、気持ちや感情や情熱が過多となって、思考の柔軟性も、経験の開放性も、新規探索性が欠如し、
「勝ちたい」
「負けたくない」
というエンジンはあったものの、
「競争を秩序立て、組織を有機的に結合し、集団のメリットを活かすための管理という制御機構(可視化と測定を前提とする科学と合理性)」
というハンドルやギアやブレーキもなく、
ルールや相場観もわからず、闇雲な独り相撲をした挙げ句、自滅する、という例です。

正解がわかっていて、定石も確立していて、試行錯誤の余地もまく、ゲーム・チェンジも不要なルーティンを遂行するなら、この種の
「非知的な山賊集団」
も有効です。

ですが、正解がなく、定石も不明で、想定外の連続で、試行錯誤が必須で、ゲーム・チェンジが何度もある、というタイプのプロジェクトには、前記のような理念により結集された知的なチームが必須となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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