00916_企業法務ケーススタディ(No.0237):下請代金の減額

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年8月号(7月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」九の巻(第9回)「下請代金の減額」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
公正取引委員会(「公取委」)

下請代金の減額:
当社は、下請代金の減額を目論み、 一度発注したソフト制作の下請代金の10%を
「協力金」
「手数料」
「情報システム使用料」
などの名目で、下請した会社から徴収しようとしています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:下請法とは
下請法は、下請業者の迅速かつ効果的な保護を図るために作られた独禁法の特則で、公取委が所管官庁です。
公取委は、下請法違反の行為を発見した場合、違反行為を中止し下請業者が被った不利益を解消するよう必要な警告や勧告を行ったり、違反企業の公表を行ったりします。
そして、違反企業が下請法違反の勧告に従わなかった場合には、公取委により改めて独禁法上の
「優越的地位の濫用」
に当たるかどうかが調査され、違反が認められれば独禁法20条に基づく排除措置命令が下されます(確定した排除措置命令に従わない場合、刑事罰が課されます)。
下請法は、対象となる取引かどうかについては、
「委託内容の種類」

「資本金の大小」
という2つの条件を設けています。
親会社が資本金の少ない子会社を通して下請会社に発注を行っている場合でも、親会社の資本金を基準に判断される場合がありますので注意が必要です(「トンネル会社規制」)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:下請代金の減額は「弱い者イジメ」
下請法は、前述の2つの条件をいずれも満たす適用対象の下請取引について、発注会社がやってはいけない
「11の禁止」
を列挙し
「4つの義務」
を命じています。
そして、
「下請業者に責任がないのに、発注時に決められた下請代金を発注後に減額すること」

「11の禁止」
の1つとして、全面的に禁止しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「弱い者イジメ」にならないために
下請業者に発注を行う際には、適正な下請代金を支払うことを前提に、本当に必要な物品やサービスを吟味した発注書(3条書面)を作成すべきです。
その上で、下請業者に発注書の記載に反する欠陥等の責任があれば、代金減額を正々堂々と求めるべきです。

助言のポイント
1.下請法の適用がある取引なのか、事前にチェックすること。「4つの義務」と「11の禁止」に注意すること。
2.下請業者に責任がないのに発注後に下請代金を減額することは下請法違反。当事者間の合意といっても後づけのものは無関係。
3.「とりあえず曖昧でいい加減な発注書で」などという発想はアウト。適正な下請代金額を前提に、本当に必要な物品やサービスを吟味して、フェアな発注書を作成すること。
4.何でもかんでも、下請代金の減額がダメだということではない。下請事業者の責めに帰すべき事由があるのであれば、堂々と主張する。
5.発注後の下請代金減額だけでなく、発注時の買いたたきも規制対象になっているので注意すること。公取委への“告げ口”に対する報復措置は絶対にNG。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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