00945_企業法務ケーススタディ(No.0265):内「々」定切りなら大丈夫!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2012年3月号(2月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」三十七の巻(第37回)「内『々』定切りなら大丈夫!?」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
就職活動中の学生

内「々」定切りなら大丈夫!?:
当社では、多めに内々定を出しておき、 特に気に入った優秀な学生にだけ内定を出し、気に入らなかった学生については内定を出さずに内々定を取り消せばよい、と考えています。
内定取消しをした会社が学生から訴えられて損害賠償を請求された最高裁判例があるので、内定ではなく、内々定で取り消せば、
「労働契約が成立した」
とはいえない状態だから、問題ないでしょう。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「内定」とは
最高裁は、採用内定について、
「労働契約が成立した」
と判断を下しています(最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決「大日本印刷採用内定取消事件」)。
内定通知を学生に出した後は、労働契約締結のために、特に改めて会社から学生に対して意思表示をすることが予定されていないのが通常ですので、上記判例以後は、
「採用内定通知は、労働契約を成立させる」
と考えられるようになりました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:内「々」定とは
近年では採用内定日を10月1日としつつ、それよりも以前に、会社の採用担当者が学生に対して、採用が決まったことを口頭で通知し、採用内定日に、正式な書面にて
「内定」
の意思表示をする慣行があり、正式な
「内定」
に先行する通知は、
「内々定」と呼ばれています。
高裁判決(福岡高裁平成23年2月16日判決(労働契約が成立したか否かについての判断)では、会社と学生が労働契約は成立していないとしつつも、
「内々定」
の取消しについて、信義則違反による不法行為に基づく慰謝料請求(22万円)を認めました。

助言のポイント
1.「ヒト」という経営資源は、「モノ」「カネ」などと異なって、人権保障の見地から、法律や判例が強い規制を働かせている。「ヒト」を「モノ」や「カネ」と同じように扱うと、必ずトラブルが発生する。
2.契約締結に至っていなくても、契約が締結されると期待していた相手方から、「契約締結上の過失」理論によって損害賠償を請求されることがある。契約締結が難しくなる事情が発生した場合は、相手方にそれを説明しておかないと、裁判所で「オマエは不誠実だ」といわれて損害賠償を命じられることになる。
3.どうしても内々定を取り消さざるを得ない場合には、取消した理由をキチンと説明できるようにしておこう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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