00948_企業法務ケーススタディ(No.0268):暴力団排除条例の理解

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2012年6月号(5月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」四十の巻(第40回)「暴力団排除条例の理解」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
難波組組長 難波 貞夫(なんば ていお)

暴力団排除条例の理解
当社の社長の無二の親友は、幼稚園時代から付き合いのある暴力団組長であり、10年来のゴルフ仲間であり、週に2回は共にラウンドし、親友の息子の結婚式では当社の交際費から100万円の御祝儀を包んだことは、公知の事実です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:暴力団対策法
「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」
は、暴力団員による暴力的な要求行為を規制したりすることで、市民生活の安全と平穏の確保を図ることなどを目的として制定された法律で、平成20年5月に改正されました。
暴力団員から市民に不当に介入する
「暴力的要求行為」
が行われた場合は、警察署長は当該行為の中止命令を発することができます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:暴力団排除条例
「暴力団排除条例」
も全国的に制定・施行されるに至りました。
1.暴力団排除活動の推進に関する地方公共団体の基本的な責務や対応方針の策定
2.地方公共団体と契約締結する相手方に対する暴力団関係者ではないことの証明の要求
3.地方公共団体による暴力団排除活動の広報・啓発活動
4.地方公共団体による暴力団の離脱の促進
5.暴力団排除活動の推進に関する住民の責務
6.事業者に対して契約締結する相手方が暴力団関係者ではないことの証明の要求
7.暴力団排除活動の推進などに向けた行為を妨害する行為の禁止
8.暴力団事務所の開設・運営の禁止
9.条例に違反した者・事業者に対する勧告・公表措置
などが規定され、国家レベルでの対抗策とあわせて、二重に規制を行っています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:東京都暴力団排除条例の特徴
平成23年10月1日に施行された東京都暴力団排除条例では、
1.暴力団や暴力団員が実質的に経営を支配する法人などに所属する者
2.暴力団や暴力団員を不当に利用していると認められる者
3.暴力団の維持、運営に協力し、または関与していると認められる者
4.暴力団や暴力団員との間で「社会的に非難されるべき関係を有している」と認められる者、具体的には、相手方が暴力団員であることをわかっていながら、
(1)その主催するゴルフコンペに参加している場合
(2)頻繁に飲食をともにしている場合
(3)その誕生会、結婚式、還暦祝いなど、多数の暴力団員が集まる行事に出席している場合
「暴力団関係者」
と判断され、不動産譲渡の制限や、東京都との随意契約からの排除など、各種の規制対象となります。
単に、親族などに暴力団員がいる場合や、暴力団員と一緒に写真に写ったことがあるという程度、また、暴力団員との結婚を前提に交際している場合などは、その事実だけをもって
「暴力団関係者」
と判断されることはない、と解されていますが、
1.飲食店経営者などが、暴力団員が経営する事業者であることを知りながら、当該事業者から、おしぼりや観葉植物などのレンタルサービスを受け、代金を支払う行為
2.風俗店経営者などが、暴力団員に対し、「みかじめ料」を支払う行為
3.ゴルフ場経営者が、暴力団が主催していることを知って、ゴルフコンペ等を開催させる行為
4.ホテルなどの宴会場やイベントスペースの経営者が、暴力団組長の襲名披露パーティーに使われることを知って、ホテルの宴会場やイベントスペースを貸し出す行為
5.不動産業者が、暴力団事務所として使われることを知った上で、不動産を売却、賃貸する行為
6.スポーツや演劇などの興行を行う事業者が、相手方が暴力団組織を誇示することを目的としていることを知った上で、その暴力団員らに対して特別に観覧席を用意する行為
7.警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その事務所の警備サービスを提供する行為
など、暴力団の助長行為や暴力団に対する利益供与を禁止しています。

助言のポイント
1.暴力団や暴力団員とのお付き合いは極めて慎重に。自分では、知人としての単なるお付き合いのつもりでも、世間や法律・条例は許してくれない。
2.暴力団や暴力団員との許されないお付き合いは、暴力団対策法と暴力団排除条例の正しい理解からはじまる。
3.暴力団員でなくても、「暴力団関係者」として規制の対象にされてしまうこともある。「暴力団関係者」としてレッテル貼りをされたくなかったら、しっかりと、これまでの馴れ合いを戒め、袂を分かつ決意も必要。
4.その気はなくても、禁止されている「暴力団や暴力団員への利益供与」に該当してしまうことがある。迷ったら、警察や公安委員会に相談しよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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