00965_企業法務ケーススタディ(No.0285):フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年12月号(11月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十七の巻(第57回)「フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社グループ 洋菓子チェーン 甘々(アマアマ)

相手方:
脇甘商事株式会社グループ 洋菓子チェーン 甘々(アマアマ) の加盟店

フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!:
子会社が展開するフランチャイズにて消費期限偽装が、メディアにすっぱ抜かれました。
社長としては、当社と資本関係があるにしても子会社の自主的な判断によって引き起こされた子会社の出来事にすぎず当社事業とはまったく関係ないことから、子会社の社長にすべての責任を取ってもらい、謝罪会見を開かせ、速やかに子会社社長を含め経営陣を刷新することで、消費者の信頼を回復を目論見ます。
しかし、偽装が発覚して以降、ジー(加盟店)のなかには売上げが激減して潰れたところもあるようで、あるジー(加盟店)が損害賠償を請求してきました。
損害賠償はグループ子会社が具体的に負担するものですが、子会社は当社の連結対象でもあるため、当社への影響も出てきそうです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:フランチャイズ・システムとは
フランチャイズ・システムとは、フランチャイズを展開している本部・フランチャイザー(以下「ザー(本部)」)において、ノウハウや著名ブランドをフランチャイジー(以下「ジー(加盟店)」)に利用させる一方で、その利用料を徴収する等の仕組みをいいます。
ザー(本部)側は、自らの多大な資本を投下することなくブランドを今以上に広げられ、また、雇用や物品の調達といった法的リスクから免れる点にメリットがあります。
一方で、ジー(加盟店)側としても、すでに世に出て一定のプレゼンスを形成しているノウハウやブランドを利用することで事業を成功させる可能性が大幅に高まります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「ザー(本部)」と「ジー(加盟店)」との関係
ザー(本部)とジー(加盟店)との関係は、両者の間に締結されるフランチャイズ契約の内容によって規律されますが、一般に、当該契約は、準委任契約、賃貸借契約や売買契約などの民法上の契約が混合している非典型契約とされており、かつ継続的な契約であるとされています。
ザー(本部)もジー(加盟店)もいずれも自ら事業を行う事業者であり、BtoB取引であることから自由に条項を定めることができると考えられていた時代もありますが、ジー(加盟店)には消費者に近い属性の人間が多数存在していたことから、甘い見込みで事業に参画し、損害を被った事例が多発するようになりました。
このようなことから、裁判例上、ジー(加盟店)に対する勧誘の際に十分な説明が行われていたのか(ビジネスモデルや収益予測等)が厳しく問われるようになり、半ば消費者問題の様相を呈することとなりました。
説明義務等が果たされ、瑕疵なくフランチャイズ契約が成立している場合、ジー(加盟店)は売上等に関する詳細な報告義務や営業秘密を遵守すべき義務、さらには競業避止義務といった重い責任を課される一方で、ザー(本部)が保有するノウハウやブランドを自らの利益のために用いることができる、ということになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:ブランド価値維持義務
東京地裁平成22年7月14日判決は、「(略)本件フランチャイズ契約は、被告(註:「ザー(本部)」)が原告(註:「ジー(加盟店)」)に対し、商標、サービス・マーク等を使用し、経営ノウハウ及び商品等の継続的な提供を受ける権利を付与するとともに、被告が開発したシステムによる(略)チェーン店の経営を行うことを許諾し、その対価として、原告が被告に対し、ロイヤルティー、加盟料等を支払うことを内容とするものというのであるから、被告は、原告に対し、その使用を許諾した商標、サービス・マーク等のブランド価値を自ら損なうことがないようにすべき信義則上の義務を負うものというべきである」と判示しています。

助言のポイント
1.ザー(本部)は、ラクして“アガリ”をせしめる、なんてオイシイことばかりではない。ザー(本部)には「ブランド価値維持義務」が課される。
2.ザー(本部)の不祥事も、ジー(加盟店)の不祥事も、フランチャイズ事業全体に対する影響が生じうる一大事と心得よう。
3.不祥事が発生したら、即座に火消しに動く。
4.ブランド価値が毀損している状況で事態を放置すると、加盟店から賠償請求の嵐を起こる。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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