00981_企業法務ケーススタディ(No.0301):廃棄物処理コストを大幅削減じゃ!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2015年4月号(3月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」七十三の巻(第73回)「廃棄物処理コストを大幅削減じゃ!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
株式会社江古田(エコダ)マネジメント

廃棄物処理コストを大幅削減じゃ!
グループ会社が現場で出す廃棄物(建設廃材)の処理コストに頭を痛めていた当社は、今までゴミとしてカネをかけて捨てていた廃材を
「リサイクル資材」
扱いへと変えるだけで、コスト削減に加え、 環境に配慮できる企業としてイメージアップもはかる話に乗ることにしました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:産業廃棄物とは
廃棄物とは、
「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(略)をいう」 (廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)2条1項)
とされています。
産業廃棄物とは、廃棄物処理法2条4項1号、同法施行令2条各号が詳しく規定していますが、要するに、
「企業(事業を行うすべての組織を含みます。後述のとおり、自治体も含む)が出すゴミ」
のことです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:悪質なリサイクル業者
産業廃棄物処理業を営むには行政の許可が必要です。
この許可を得るには、産業廃棄物処理施設の設置基準をクリアせねばならず、このような施設を建てるとなると、周辺住民から猛烈な反対運動が沸き起こったり、この対策費用等のため、多額なコストがかかることがほとんどです。
「多額のコストはかけられない、したがって、許可はもらえない、とはいえ、ゴミ処理というおいしい商売には加わりたい」
ということで、適正な許可を得ず産業廃棄物処理業に参入する違法な業者がかなりの数存在するようです。
企業としては、事業活動をすれば産業廃棄物は必ず排出され、しかも途絶えることがないため処理費用はバカになりません。
この処理費用につけ込んで、違法業者が
「リサイクルビジネス」
と騙るケースがあります。
普通であればゴミとなる廃棄物を、リサイクル品であると称して、産業廃棄物処理の許可を受けずに引き取り、これを山中などに不法投棄するのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:違法な産業廃棄物の処理には罰則も
そもそも企業が産業廃棄物を運搬処理してもらう場合、行政から許可を得た業者と書面で委託契約を取り交わした上で、証明書のやり取りをしなければなりません。
これらの規制、手続きに違反すると、当該違法な処理業者のみならず企業も連座して罰則が科される可能性があり、最高5年の懲役まで定められています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:「不法投棄をする奴が悪いから、頼んだわしゃ知らん」という言い逃れは通用しない
ゴミの排出企業は、ゴミがきちんと法律通り処理されているかについて、最後まで責任を持つようにと法律に規定されています。
したがって、ゴミを業者に預けたら不法投棄されたという場合、その不法投棄されたゴミも責任を持って回収しなければならなくなるのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5:ゴミとリサイクルを見極める
違法処理業者に頼まないための判断基準は、最高裁判決平成11年3月10日が示しています。
当事者が
「これはゴミではない! リサイクル品だ!」
と言い張ったところで、引き取った業者に使い道がなければ結局ゴミだということになってしまう、というものです。

助言のポイント
1.廃棄物の処理は、行政から許可を受けた業者に頼まねばならない。違反すると罰則の可能性がある。
2.「処理を頼んじまえば、後は知らん」とはならない。ゴミを排出する企業はゴミ処理の最後まで責任を負うから、頼む業者が信頼できるか見極めること。
3.当事者が「ゴミじゃない!リサイクル品だ!」と言い張っても、ただのいらない物ならゴミ。いくら言い換えても中身は変わらない。
4.リサイクルとか社会的責任とか、イメージに踊らされて適当なゴミ処理をすると、法律に違反して痛い目に遭う。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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