00983_企業法務ケーススタディ(No.0303):仮眠時間が労働時間? んなワケあるかい!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2015年6月号(5月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」七十五の巻(第75回)「仮眠時間が労働時間? んなワケあるかい!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
脇甘商事株式会社 子会社 脇甘ビルメンテナンス

仮眠時間が労働時間? んなワケあるかい!
メンテナンス業の子会社は、24時間対応が求められることから深夜帯の残業分である人件費が収益を圧迫し、営業利益が出にくい状況が続いています。
そこで、社長は、
「遅番の従業員の仮眠時間は労働時間ではないということで支払わない」
とし、突発的な業務が発生した場合には時間外勤務手当を支給することにしました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:労働時間ってそんなに重要なの?
労働時間は、
「会社で働いている時間」
ということになり、労働契約を法律に照らして考える上では重要です。
特に、職場に滞在した時間がすべて労働時間か休憩時間か、という最終的な解釈の違いによって、給料額に響くくらい変わってきますので、労働者にとっても会社にとっても死活問題です。
最高裁(平成12年3月9日三菱重工業長崎造船所事件判決)によれば、
「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間である」
とされています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:判断が結構ビミョーな「休憩時間」概念
労働基準法は、休憩時間について、一定の時間労働が継続した場合には休憩をさせろ、と規定し(同34条1項)、長時間労働の弊害である作業効率の悪化や、不注意を防止しようとしています。
この労働時間と取り扱う必要のない
「休憩時間」
とは、通達(昭和22年9月13日基発17号)によれば、
「単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意」
とされており、要するに、どこに行こうが、誰と何を話そうが、ゲームをしようが、はたまた昼寝をしようが、会社は一切文句をいえない時間帯を指すということです(しかし、職場の守秘との関係で、社内規則等に違反する自由はありません)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:仮眠時間は休憩時間に含まれる!?
深夜時間帯については、眠ってもよいとされているため、最高裁平成14年2月28日判決(大星ビル管理事件)は、仮に眠っていたとしても、実は、労働からは開放されていない、という状況があり得る、と判示しました。
また、宿直勤務手当の支給をもって遅番の賃金とする、というような合意が真実存在するとしても、労働基準法の要求を下回ってしまうため労働法制の規制は逃れられない、と判示しました。

助言のポイント
1.労働時間を「合意」によって定義なんてできやしない。労働基準法に違反するような「合意」なんてやるだけ意味がない。むしろ、会社側の悪質さを裏づけるにすぎない。
2.休憩時間=労働からの完全なる解放、が原則。ただ、具体的な事案に即しながら丁寧に検討すれば、例外もあり得る。
3.仮眠してようが、「何か起こったときにはすぐに対応するように!」みたいな指示をしていたら、眠らせながら働かせているのと変わらない。従業員に何を期待して休ませているのか、一度立ち返って考えよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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