01002_企業法務ケーススタディ(No.0322):大手法律事務所から商標権侵害の内容証明?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2017年1月号(12月24日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」九十四の巻(第94回)「大手法律事務所から商標権侵害の内容証明?」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
グループ会社 サイド・スイーツ株式会社
同社 顧問弁護士 千代凸 亡信(ちよとつ もうしん)
同社 顧問弁護士 先陀 木津夫(ぽんだ こつお)

相手方:
石頭製菓
ジャニー・吉本&周防法律事務所

大手法律事務所から商標権侵害の内容証明?
大手法律事務所から
「商標権侵害だ、即刻、販売をやめろ」
と内容証明が届きました。
グループ会社が3年の歳月と莫大な予算と社運をかけて販売した新商品の名前が、オマージュではなく丸パクリ、ととらえられたようです。
顧問弁護士は、相手が大手法律事務所と聞いて、
「とにかく頭を下げて、商品を回収して、なかったことにして、穏便に」
と助言します。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:商標権
トレードマーク、サービスマーク、ブランドロゴなど、登録した者だけが使える文字、図形、記号(最近では、立体的形状や音や匂いといったものも含まれます)を権利化したものが、商標権です。
商標権を取得した者以外の個人や法人が、無断で、登録されたカテゴリーに属する商品サービスの、同一あるいは類似の商品名で販売すると、侵害行為として、販売禁止や商品破棄さらには損害賠償といった各種アクションを受けます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:知財紛争では、「とりあえず、いっちょ、争ってみる」という姿勢が“吉”
ある日、突然、知財ホルダーの会社の代理人弁護士から、
「侵害警告」
「即時販売停止」
「模倣品廃棄」
「損害賠償の要求」
といった言葉が並ぶ内容証明郵便による通知書が送られてくる企業が増えています。
この場合、知財ホルダーの主張を丸呑みする選択肢もありますが、逆に、因縁をモノともせず跳ね返し、権利自体を潰したりする法的対抗策も選択肢としてあります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:面白い恋人事件やフランク三浦事件に見られる裁判所の姿勢
吉本興業の子会社である株式会社よしもと倶楽部が、石屋製菓が販売する
「白い恋人」
の商品名とパッケージを模倣した
「面白い恋人」
という菓子を販売したところ、石屋製菓は、吉本興業ら3社に対し、商標権侵害および不正競争防止法を根拠とする商品の販売禁止および破棄を求める訴訟を札幌地方裁判所に提訴しました。
最終的には和解が成立し、吉本興業は
「面白い恋人」
のパッケージ図柄を変更し、販売を関西六府県に限定する形で、既存商圏維持に成功しました。
また、スイスの高級時計製造販売会社
「フランク・ミュラー」
が、大阪の時計メーカー
「フランク三浦」
の登録した商標の無効性を争った事件がありましたが、裁判所は、フランク三浦を勝訴させました。

助言のポイント
1.知財をむやみやたらに恐れない。海賊版やデッドコピー商品以外の、類似品やパロディ品やオマージュについては、裁判所はわりと寛容。
2.対抗策については、商標法に列挙されている。条文をよく読んで、無効理由や抗弁をひねり出そう。わからなければトコトン聞くこと。
3.商標権はマボロシだ、全く似てない、抗弁がある、といったことを言い続け、相手の主張に一切耳を貸さず、最後までジタバタして、粘って、裁判までもつれ込ませよう。話のわかる裁判官から和解を勝ち取る可能性もあり得る。とにかく、ビビって、降伏して、相手の言うなりになるのは危険と心得よう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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