01009_企業法務ケーススタディ(No.0329):M&Aは気合で競り勝て!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2017年8月号(7月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百一の巻(第101回)「M&Aは気合で競り勝て!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
ウエステッド・ホーム・センター社(ウエステッド・ホーム社)

M&Aは気合で競り勝て!
当社で、ある会社をM&Aで傘下に収める話が持ち上がりました。
法務部長は、つり上がっていく金額、時間的切迫性のあるデューデリジェンス、よくわからない手形の裏書きの出現、サービス残業の噂、買収後の保証提供など、リスクに懸念を示しますが、社長は、
「買うためにはあらゆることを前向きに検討せよ」
と、躍起になっています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:日本企業の不得意中の不得意科目「M&A」
M&Aは、いってみれば、買い物と同じです。
「本当に必要な良い物を、焦っていないときに、安く買う」
というのが買い物における賢い戦略です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:M&Aはなぜ失敗する?
「買いたい」
という強い願望が先行し、この願望が強力なバイアス(認識の歪み)となって
「価格の合理性に関する検証」
を怠らせ、
「買いたい気持ちがある以上、多少高くても、値段は安いと信じる」
といった愚劣なジャッジの末、経済合理性に反する買い物を敢行するのが、買い物慣れしていない日本企業のM&Aプレースタイルです。
「感情で決めて、理屈で正当化し、相手のペースに振り回され、引くに引けず、最後は意地になってどこまでも高値交渉に付き合う」
という、
「買い物では、最もやってはいけない、愚かな購買行動」
に走るのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:M&Aで失敗しないためには
M&Aは、手段であって目的ではありません。
金儲けという目的にとって有益である前提で、安ければ買うし、あまりに高くて金儲けどころか逆にカネを失うようであり、また、別の代替手段がより廉価で効率的であれば、そちらを検討するだけです。

助言のポイント
1.M&Aなど、主婦の買い物と同じ。「いらんもん買わへんし、いるもんでも値切り倒すし、粘って粘って粘り倒しても値切れんようやったら、買うのやめて、帰って、別の機会を待つ」という大阪のオバちゃんのメンタリティで臨むこと。
2.M&Aそのものは、単なる金儲けの手段で、それ自体には意味がない。無茶苦茶安く買いたたいた後、どうやって活用して、のれんをとっとと償却し、償却後、シビれるくらいバカスカ儲けるか、という観点を忘れない。
3.「買いたい」という強い願望が先行すると、この願望が強力なバイアスとなって「価格の合理性に関する検証」を怠らせる。「買いたい気持ちがある以上、多少高くても、値段は安いと信じる」といった愚劣なジャッジの末、経済合理性に反する買い物を敢行すると、大やけどを負う。
4.ヒートアップしそうになったら、冷静になって、「たかがM&A」くらいの気持ちで、入れ替わってしまった「目的と手段」を巻き戻して、メンタルをリセットしよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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