01013_企業法務ケーススタディ(No.0333):移転価格の恐怖!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2017年12月号(11月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百五の巻(第105回)「移転価格の恐怖!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
脇甘商事株式会社グループ シンガポール現地法人 NADESHIKO, PTE.LTD.
脇甘商事株式会社 ライフアンドヘルス事業部 課長 撫腰 太郎(なでごし たろう)

相手方:
国税庁

移転価格の恐怖!
シンガポールに現地法人を設立したものの、苦戦しているとのことで、本社に支援要請がきました。
担当者がいうには、子会社を助けられる上に本社の税負担も軽減されるとの話です。
今期売上が4倍増で法人税もそれなりになるところ、現地子会社への卸値を安くすると、その分本社の利益は減り法人税も下がり、仮に子会社が儲かったとしてもシンガポールでの税率は日本に比べてはるかに低いためグループ全体でみると節税になる、というのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:国税当局を激怒させる理由
当社とシンガポール現地法人を、経済的総体として捉えた
「グループ全体」
でみると、身内のようなものであり、当社が商品を高く卸そうが正価で卸そうが、それ自体に問題はありませんし、取引自由の原則という点からしても、誰にいくらで売ろうが商売の自由の領分であり、国から何かいわれる筋合いはなさそうです。
しかしながら、日本の国税当局からすると、到底容認できない話で、徹底的に弾圧すべき、ということになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:移転価格って何?
わが国は、海外現地法人等恒久事業拠点に対して、高く売るべきものを安く卸したり、廉価のものを高額で仕入れたりする取引を、
「価格を恣意に移転させて、日本国の税務当局の徴税権を侵害するもの」
として、これを一定の要件の下、税務上認めない法制度(移転価格税制)を採用しています。
前提として、問題になるのは、日本の企業が現地法人等恒常的進出拠点を作って海外進出するケースで、問題の背景には、
「各国において、税率が一律ではない」
ということも、大きく影響しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:租税特別措置法第66条の4
移転価格税制の根拠とされる条文は、租税特別措置法第66条の4にあります。
わかりやすく翻訳すると、
「子どもや親戚や身内やからゆうて、無茶苦茶な条件で取引しても、税務当局としては、そんな姑息で卑怯なやり口、認めまへん。
みかじめ料計算する上では、独立企業間価格に引き戻してやらせてもらいますさかい」
ということです。
悪質な仮装隠ぺい行為があったりすると、重加算税や脱税犯扱いなど、されかねません。

助言のポイント
1.海外現地法人等との取引の際、経済合理性がない、説明ができない、異常な価格設定をして、日本で納める税金が安くなる? そんなふざけた話を税務当局が笑って許しくれるはずはない。
2.海外現地法人等との取引にあたっては、移転価格税制をしっかりスタディし、日本の税務当局の徴税権を侵害するような、税務当局からみて「みかじめ料をちょろまかす不届き者」と誤解される形になっていないか、検証しよう。
3.移転価格税制上、税負担を違法不当に逃れた、と判断されると、追徴課税のほか、延滞税、過少申告加算税、さらには、悪質な場合、重加算税や脱税犯としての問擬もあり得る。また、数年にわたる取引が積み重なると、額も大きく会社の存立に関わる大事になる危険性もあるから、しっかりとした対応が必要。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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