01030_企業法務ケーススタディ(No.0350):アクティビストが襲来した!(5)株主総会でやり込められそうだ!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2019年5月号(4月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百二十二の巻(第122回)「アクティビストが襲来した!(5)株主総会でやり込められそうだ!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
ハーゲン鷹田・アンド・パートナーズファンド (ハゲタカファンド)
個人株主

アクティビストが襲来した!(5)株主総会でやり込められそうだ!:
株主総会当日。
株主からの厳しい突き上げに、脇甘社長は窮地に陥ってしまいました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:株主総会対策のトレンド変化
アクティビストは、
「図星を突いた鋭い質問」
を、インテリジェントかつエレガントかつジェントルに投げかけます。
さらにタチが悪いのは、会社法を徹底的に勉強し、株主総会における会社側の説明義務を明確に意識した上で、説明義務が果たせないような状況に追い込むシナリオを設計し、見事に追い込んでいく入念さ。
加えて、野次馬根性丸出しの個人株主が数の力でアクティビストを支援します。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「投資家との対話重視」時代の総会対策
投資家の質問が依拠する前提理念や前提価値観を集約・整理すると、
「会社は『シェアホルダーズ(株主)』のものであり」
「『シェアホルダーズ』は短期的利益追求を望んでおり」
「会社は、短期的利益追求という『シェアホルダーズ』の要請に応えるべきだ」
という趣旨のものとして整理されます。
他方、会社としては、ゴーイングコンサーン(企業が永続するという理論的前提)による長期的利益追求が目的です。
会社経営陣が、
「会社は、短期的利益追求という『シェアホルダーズ』の要請に応えるべきだ」
という議論の土俵に乗ってしまうと、ほぼ間違いなく論破されることになります。
したがって、質問に対する説明としては、彼らの依拠する前提理念や前提価値観を覆し、まったく別の理念・哲学を基礎にして、
「立場が違うから、いくら議論しても隔たりは解消しない。
その意味では、これ以上の質疑は無意味。
あとは、価値選択の問題なので、決議によって決するほかない」
という論理状況を創出して初めて、説明を打ち切ることが可能となります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「会社はトレーダーだけのものではない」という説明ロジック
「会社は、短期的利益を追求する株主だけのものではなく、株主を含む多数のステークホルダーズ(利害関係者)のために存在するものであり、短期的利益追求もさることながら、ゴーイングコンサーンを最大の存続目的とする。
したがって、短期的利益追求のみを指向したご質問は、前提において当社の目指すべき方向性と異なる」
というような価値観や理念は、現代的な株式会社の運営理念としてフェアかつリーズナブルなものとして提唱されたものであり、相応に説得力があります。
彼我の意見の隔たりの根源的な分岐点までたどり着ければ、あとは、価値選択の問題であり、もはや質疑によって解消できる性質のものではなく、採決で決するほかありません。

助言のポイント
1.株主総会対策において、「総会屋を仮想敵とする昭和や平成初期の対策」は、もはや時代遅れの代物となっている。「インテリジェントかつエレガントかつジェントル」な株主から「図星を突いた鋭い質問」をされた場合には使えない。
2.「遊休資産の放置を指摘し、株主還元や配当増額に回せ」という株主サイドの主張に対し、「会社は株主のもので、株主のいうことは絶対」という土俵に乗って議論した瞬間、反論ができなくなってしまう。
3.「会社は、トレーダーだけのものではなく、株主を含む多数の利害関係者のために存在するものであり、短期的利益追求は、長期の継続にとって有害」という価値対立、理念対立にまでさかのぼって議論を構築しよう。
4.価値対立まで議論が進めば、「これ以上は考え方の違いで、堂々巡り。あとは採決で決する」と説明義務の呪縛から逃れられる。頭を使って、うまくやりすごそう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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