01040_企業法務ケーススタディ(No.0360):倒産危機!  救いの手は助け舟か泥舟か!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2020年3月号(2月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百三十二の巻(第132回)「倒産危機! 救いの手は助け舟か泥舟か!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社 顧問弁護士 千代凸 亡信(ちよとつ もうしん)

相手方:
灰田・江成(はいだ えなり)法律事務所 弁護士 灰田
よこしま銀行
みすて銀行

倒産危機! 救いの手は助け舟か泥舟か!?:
脇甘商事が倒産の危機に見舞われました。
メインバンクから新規融資の見合わせを通告され、資金繰りが急激に悪化し、ファンドや会計コンサルティングファームや大手法律事務所が紹介されました。
とはいえ、当社は、昔からもっている都心一等地の不動産が多数あり、取引先の離反や転注通告は1つもありません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:事業信用と金融信用
企業経営には信用が必要です。
信用は、事業に関する信用と、金融上の信用にわかれます。
俗に、黒字倒産という言葉があります。
事業信用は健全であっても、金融信用をなくせば、会社が倒産してしまう、ということです。
実際、破産手続開始原因として、債務者の債務超過に加え、
「支払不能」
という要件も挙げられています。
債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいい(破産法2条)、これは、民事再生法にも、会社更生法にも存在します。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:資金繰りが悪化したら会社はすぐに潰れるか
銀行は、強硬で暴力的な回収をして高利を貪り食うことを生業にしているわけではありません。
金融上の信用が毀損したからといって、すぐに民事再生や会社更生に行くというのは、早計に過ぎると思われます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:会社の再生とオーナーや経営者の地位の帰趨
「銀行に泣いてもらう」
前提で会社が再生する、というたてつけである以上、オーナー(株主)や経営陣が株主責任や経営責任を問われずに無傷で安泰、という無茶苦茶な話が通るとは到底思えず、ほぼ間違いなく、お払い箱になるでしょう。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:結論
相手方弁護士が語るホラーストーリーを真に受け、
「法的整理や事業再生ADRしかない」
と思い込むのは、早計に過ぎる、といえましょう。
「銀行にちょーっとだけ待ってもらえば済む話」
という社長や顧問弁護士の見解は、そのとおりです。
債務者である当社主導で、きちんとリスケ案を作成して軟着陸させ、その間に資産の処分や、不祥事やトラブルの沈静化、事業の継続、信用の回復をさせれば済む話です。

助言のポイント
1.不祥事等で資金繰りがおかしくなったからといって、「破産だ、民事再生だ、会社更生だ」と慌てる必要はない。信用不安や信用毀損の実体が、事業信用まで及んでいるのか、一過性の金融上の信用不安なのか、冷静に見極めよう。
2.法的整理や事業再生ADRにおいては、必ずといっていいほど銀行が泣く羽目に陥る。その状態で、「株主としても経営者としても責任はなく地位は安泰」などと寝ぼけた想定はできない。株は紙屑、経営者はお払い箱、最悪役員としての責任まで追求される。
3.民事再生や会社更生や事業再生ADRでは、かなりの割合で、株が紙屑化し、別の資金提供者が株主として投資をするので、会社は残るが、実質的には、乗っ取られることになりかねない。注意と警戒を怠らない。
4.「事業は健全、資産も健全、資金繰りだけ危ない」という場合は、大騒ぎせず、債務者主導で任意整理や特定調停を行い、銀行に待ってもらう、という戦法も、実は有効で検討に値する。銀行は街の金融業者と違い、高圧的な差押を忌避し、先延ばしにしがちだから、きちんと相手の行動習性を見極めて判断しよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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