01080_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>セカンドオピニオン

これまでの企業法務の世界では、顧問弁護士(契約法律事務所)業務は1人の弁護士あるいは1つの法律事務所に専属的に依頼し、事案の相談については、顧問弁護士(契約法律事務所)以外の弁護士には一切相談しないという慣例がありました。

しかしながら、ビジネス環境や規制環境が激変し、法的実務が日々進化変遷し、法令も目まぐるしく変わる現代においては、弁護士の対応力にも当然差が生じることとなります。

すなわち、一括りに弁護士といっても、理論研究に熱心な弁護士と裁判実務に傾倒する弁護士、特定分野に特化する弁護士とジェネラルな活動を行う弁護士、法廷経験の豊富な弁護士と契約書作成業務しか扱わない弁護士、ビジネス・税務・財務等の理解を前提に柔軟にリーガルサービスを構築する弁護士と法的正義の実現を目指す弁護士、国際経験がある弁護士とそうでない弁護士、大都市で開業し最先端の法務課題に常に直面する弁護士と地方で地域に密着したサービスを行う弁護士、という形で色分けされることも厳然たる事実です。

例として、敵対的買収の危機に直面したような場合を想定しますと、企業としては、一方で株主全体の利益を図りつつ、他方で株主を含むステークホルダーズ全体の利益を破壊する特定株主の排除をしなればならない、というジレンマに直面します。

そして、この状況においては、侵害排除の方法として考えうる戦略オプションの選択に直面しますが、裁判例が豊富といえない分野に関し、法令解釈上の決断をして、法律上グレーな分野に踏み込む決断を迫られることもあります。

このような状況の場合、単一の弁護士、例えば、長年当該企業の顧間として、業界の状況や慣行に詳しいという理由のみで継続して依頼している顧問弁護士(契約法律事務所)に全てを委ねるのはリスクが高い場合があります。

企業法務に関心の高い企業は、専門分野や得意分野等を勘案し、複数の弁護士ないし法律事務所と契約し、重要課題について多元的な法的検証を行うことを始めています。

これは、セカンドオピニオンと呼ばれるものであり、最近医療分野において注目を浴びているプラクティスです(「セカンドオピニオン外来」という診療分野を標榜する病院も登場しています)。

すなわち、特定の課題について専門家から意見を採取した場合であっても、多面的に課題を検証したいときや、当該意見に疑義があるとき、あるいは意見の正確性を確かめたいとき等に、別の専門家から二次的、補完的に意見を採取することをいいます。

弁護士に意見を求める課題は企業の生死や事業の成否を決するものが多く、多面的な検証を行い、確実で正確な意見を採取したいというクライアントの要望は強いと思われます。

特に、新規事業に取り組む場合などは、法的な解釈に一定の幅がある場合が多く、弁護士の個性や経験、属性(取引専門の弁護士か、紛争実務経験が豊富な弁護士か)も大きく反映されることとなり、同一課題に複数の意見が呈される場合が多く存在します。

このようにして多元的検証を重ねることにより、企業の予防法務体制が充実し、思わぬリスクの発生や法令違反を伴う不祥事の発生が逓減されることが期待されます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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