01118_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(2)内部統制の関係

コンプライアンス経営あるいはコンプライアンス法務という概念が本格的に意識され始めたのは、大和銀行ニューヨーク支店の不祥事に関する株主代表訴訟に対する大阪地方裁判所判決(大阪地裁平成12年9月20日判決)が契機といわれています(1987年に発生した東芝機械ココム違反事件に際し、貿易管理法令遵守や輸出管理コンプライアンスといった概念の導入等が議論されましたが、この概念が産業全般にわたる法令遵守という経営課題として広がることはなかったようです)。

上記判決は、企業の経営幹部に対して、企業活動に関連する各種法令の遵守を取締役の善管注意義務の内容として求めるとともに、具体的法令遵守体制として
「企業内の従業者が法令違反を犯さないようにするための、科学的かつ合理的な、企業組織内部の管理・統制の体制」
ともいうべき体制の構築と運用を、企業の経営幹部の法的義務(善管注意義務)として求めた画期的なものでした。

そして、上記の大和銀行ニューヨーク支店事件判決を嚆矢(こうし)とする多くの裁判例の考え方で明らかにされた企業義務が、現在の会社法における内部統制システム構築義務として明文化されました。

さらに、カネボウの粉飾決算や西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載事件等、株式公開企業に関する財務報告の偽装問題が資本市場の信頼性を揺るがせた問題に端を発し、金融商品取引法においては
「財務報告に係る内部統制制度」
も導入されました。

その結果、株式公開企業は、会社法に基づく内部統制システム構築・運用義務に加え、
「財務報告に係る内部統制」
の構築・運用も義務づけられるようになりました。

企業のコンプライアンス体制をめぐっては、
「内部統制」

「コンプライアンス」
さらには
「財務報告に係る内部統制」
も加わり、様々な概念が入り乱れてきましたが、整理すると、次のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、以上のようなコンプライアンス体制構築義務が、会社法に基づく内部統制システム構築義務と同義とする考えは、2002年4月5日神戸製鋼所株主代表訴訟における神戸地方裁判所の和解所見も採用しているところです。

以上のとおり、コンプライアンス法務ないしコンプライアンス経営を、
「会社法の内部統制システム構築義務の履行として企業が行うべき、(倫理や道徳等といった非法律的課題を除く)法令違反行為に起因する不祥事予防を目的とした、企業内組織体制構築に関する業務」
として定義します。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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