01148_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(4)有事対応の基本姿勢その2

3 危機のときこそ堂々たる対応を

有事対応について一番日本的で、かつ最も有事対応上意味のないと思われる行為は、
「世間をお騒がせして申し訳ありません」
というお詫びです。

中には、さらに土下座までする光景が見られる場合もあります。

欧米企業の場合、どのような破廉恥な不祥事があってもトップ達は堂々として、事態の究明と原因の特定と今後の取組姿勢を強くアピールします。

上記のような典型的な日本企業の対応も、
「とりあえず世間の逆風を緩和する」
といった意味ではそれなりの効果があるかもしれませんが、社会的には全く通用しておらず、むしろいたずらに企業内の従業員の不安と離反を招来するだけです。

とかく混乱し士気が低下しがちな従業員に誇りをもって難局にあたらせるためにも、トップは堂々として対応し、組織の求心力を高めることが推奨されます。

4 対応を遅らせず、放置せず、損害拡大を可及的に防止する

雪印乳業の食中毒事件や三菱自動車のリコール隠し事件では、事件そのものの悪質性以上に注目されたのが、必要な事故情報に接した後の
「トップの不作為」
です。

アメリカのジョンソン・アンド・ジョンソン社は1982年に自社の主力商品である
「タイレノール」
に毒物が混入し死亡者が発生するという事件に直面しました。

このとき、ジョンソン・アンド・ジョンソン社は巨大なコストを負担して全米から製品回収を行う、という決断を迅速に行いました。

参天製薬についても同様の事件(2000年6月に目薬に毒薬を混入したという脅迫状が送られてきた)がありましたが、こちらも損失を負担しながら直ちに事態を公表し、250万個の目薬回収に踏み切り、顧客の信頼を確保することに成功しています。

このように、有事状況発生後は、その原因を探り関係者の処分や企業としての責任のとり方を検討することも重要ですが、まずは、損害の拡大防止であり、そのための迅速な行動です。

その意味では、有事における対応として、過去に遡る
「原因究明」
と、未来に向けた
「損害拡大防止」
という、時間の流れが相反する2つの課題を同時に達成しなければならず、経営陣の強いリーダーシップと迅速果断な決断・行動が必要となるのです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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