01203_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>解雇

解雇とは、企業側からの、一方的に従業員との雇用契約を将来にわたって解約する意思表示をいいます。

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効と扱われます(労働契約法16条)。

採用には特段制限はありませんが、解雇は自由にできません。

婚姻になぞらえるならば、
「結婚は自由だが離婚は不自由であるのと同様、採用は自由だが解雇は不自由」
ということになります。

解雇に関しては、古い事件ですと、政治的信条を理由に行った解雇が東京高裁で無効とされた川崎重工業事件(1963年)があります。

比較的新しいところでは抑うつ病罹患を理由とした解雇が東京地裁で無効とされた東芝抑うつ病解雇無効事件(2005年)、整理解雇が大阪地裁で無効とされたネスレ事件(2005年)等があります。

また、経営感覚と裁判例の大きなギャップを示す事件として、高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日判決)というものが挙げられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

「無断遅刻・無断欠勤などした従業員は解雇が当然」
と考えている経営者も多いかと思いますが、同事件(最高裁昭和52年1月31日判決)では、
「2週間の間に2度、宿直勤務の際に寝過ごし、定時ラジオニュースの放送事故を起こし、放送が10分間ないし5分間中断されることとなり、2度目の放送事故を直ちに上司に報告せず、後に事故報告を提出した際に、事実と異なる報告をしたアナウンサー」
に対する普通解雇について、
「解雇をもってのぞむことはいささか過酷に過ぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできない」
として解雇を無効としています。

解雇問題についての法務対応ですが、解雇とは企業側から一方的に申し入れる場合を指しますので、従業員からの申し出による雇用解消(退職)には解雇規制が及びません。

なお、会社が存亡の危機にあるような場合には、一定の要件を満たせば、従業員側に非がなくても解雇が有効なものとして認められる場合もあります(整理解雇の法理)。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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