01253_ファイナンス法務>経営資源「カネ」の調達・活用に関する法務>ファイナンス法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>金融商品取引規制違反事案への対応>終結戦略

最も重要なのは事件を教訓化し、さらなるコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)の強化に向けて改善を実施することです。

関係者の処分だけで、事件を終結させ、内部統制システムを従前のまま放置すると、また同種同一の法令違反が再発してしまうことになります。

今回発覚したリスクを重大なリスクとして、同種類似のリスクに対する有効なアプローチとなる管理体制を構築する、業務報告や監査の頻度を増やす、今後再発した法令違反行為に対してはより厳しい処分運用を行う旨、 トップが表明する等の対応が必要となります。

また、
「トレーダーの昇給や賞与査定の点において、故意によらざるものであっても内部統制上のルールに違反した者の昇給を見合わせ、査定上の不利益を与える」
等のソフトな解決も必要に応じ検討すべきです。

無論、以上の措置は、監督当局宛報告書
「今後のコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)における改善」
に盛り込むべき事柄です。

金融庁による処分が非公開ベースで行われた場合は、広報活動は不要ですが、処分が公表された場合には、企業として投資家や取引先・顧客等に向け、違反事実を正確に報告し、これに対する関係者の処分や再発防止のための措置を講じたことを知らせ、イメージ回復を行うことが必要になってきます。

無論、この手の広報は早ければ早い方が望ましいものです。

しかし、だからといって、後に予想される被害者との訴訟や行政訴訟や不服審査における対応、さらには株主代表訴訟等も予測しておかなければなりません。

したがって、
「全てを漏れなく、正直に」
という原則があてはまるとは限りません。

この点も、法務関係者や弁護士との連携を行い、訴訟等の正確な展開予測の下、事後の訴訟対応リスクと広報価値の調査を十分行った上で、実行する必要が出てきます。

また、処分には営業停止○日間といった場合もあるので、この間に発生する顧客の解約についての問い合わせへの対応やその方法の告知等のマネジメントも重要となります。

これらのマネジメントの巧拙により、企業価値の再浮上の可否が決まるといっても過言ではありません。

有事においては企業のトップの役割は非常に重要性を帯びます。

すなわち、企業のトップとして、以上の様々な有事対応課題に対し、社内一丸となって全力で取り組めるよう、企業内従業者を鼓舞し、士気の維持に努めることが求められるのです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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