01278_知的財産法務>知的財産及び情報マネジメント法務。経営資源「チエ」の調達・活用に関する個別法務課題>知的財産法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>共同開発におけるリスク予防

最近では、企業が他社と共同で開発するような状況も増えてきています。

他方、他社との共同開発プロジェクトには様々な法務リスクが伴うことがあり、共同開発推進にあたっては、これらの法務リスクの予防を効果的に行うことが重要です。

まず、中小企業等において大企業から共同開発を持ちかけられた場合、共同開発という名の下に中小企業が独自に開発した成果を吸い上げられてしまう危険性がありますので注意が必要です。

共同開発が独占禁止法と抵触するリスクが挙げられます。

すなわち、大企業同士が共同開発の名の下に強い結束を形成し、市場支配力を形成して公正な競争をゆがめたり、あるいは開発された成果を共同で専有することを通じて他企業を排除したりすることで独占禁止法に違反する可能性が指摘されています。

この観点から、公正取引委員会は、
共同研究開発に関する独占禁止法上の指針
知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
標準化に伴うパテント・プールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」
等、共同開発や開発成果の利用に関してガイドラインを公表し、市場における公正な競争を阻害する行為に厳しく目を光らせていますので、特に大企業等の共同開発においては注意が必要です。

また、知的財産権の企業間相互利用を促進するパテント・プール(特許権等の知的財産権を有する企業が仲良しグループを作って、各自が保有している知的財産権を企業が合同で出資する特定の会社〔ジョイントベンチャー会社、あるいはコンソーシアムといわれます〕に管理させ、メンバーの企業だけが知的財産権を使えるような仕組みのことをいいます)についても、運用次第では独占禁止法違反の問題を生じえますので、注意が必要です。

無論、知的財産権は権利者に独占的利用権が与えられており、もともと反競争的な権利であることは確かです。

これを受けて、独占禁止法21条はこれら無体財産権による
「権利の行使と認められる行為」
には独占禁止法を適用しないとしています。

ただ、これは、逆の見方をすれば、新参者の嫌がらせの道具として使うような場合は、
「権利の行使」
とは認められず、独占的権利についても独占禁止法のメスが入る、ということになります。

共同開発における予防法務としてケアすべき課題として、贈賄罪リスクというものも存在します。

最近、大学の研究成果を民間企業に利用することが推進されるようになってきました。

ところで、大学の中でも国立大学法人の教授との共同研究を行うにあたっては、国立大学法人の教授は
「みなし公務員」
として刑法上公務員と同等の扱いを受けますので、不当な金品の提供が贈賄罪として問擬される危険があります。

特に、製薬会社などは、新薬開発の際の治験データ取得等を国立大学法人医学部教授に委託する際、病院医師に新薬を売り込むような感覚で接すると、次のケースのように、後日、大きな刑事事件に発展する場合もあるので、注意が必要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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