01281_知的財産法務>知的財産及び情報マネジメント法務。経営資源「チエ」の調達・活用に関する個別法務課題>知的財産法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>被侵害ケース

知的財産法務における有事状況としては、自社の特許権等が侵害されたケース(被侵害ケース)と、他社より
「自社が製造・販売する製品が特許権等を侵害している」
と訴えられたケース(侵害ケース)とがあります。

特許権を侵害された事例においては、紛争の相手方が製造・販売する侵害品が自社の特許の技術的範囲に属するか否かを最初に検討しなければなりません。

もちろん、自社製品のデットコピー品や自社特許を何ら改変をせずに利用している場合は、問題なく特許権を侵害したとして各種請求が認められます。

しかしながら、現実の特許侵害事例においては、対象特許に何ら手を加えずに実施しているケースばかりでなく、特許技術に微妙にアレンジを加えている場合もあります。

そのような場合、当然侵害行為をしたと目される相手方は、
「当社の技術は、貴社技術とは似ているが、違うものだ。貴社の特許技術は、特許請求の範囲に記載されたものに限定されており、当社の技術は何ら貴社特許を侵害していない」
と反論することが考えられます。

このようなときに、特許請求の範囲を、単なる文言上記載された範囲から拡張させて、特許侵害者の用いる
「似て非なる」
技術をも特許請求の範囲として捕捉し、侵害請求の対象とする理論が均等論と呼ばれるものです(ボールスプライン軸受事件、最高裁平成10年2月24日判決)。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

侵害警告の際、特許権等を侵害している当事者たる企業にのみ警告文を送付するのは特段問題ありませんが、当該侵害企業のみならず、侵害企業が製品等を販売している取引先や販売店にまで侵害警告を発する場合、侵害警告行為が別途不正競争防止法に違反する違法な行為と問擬されることも生じえます。

すなわち、不正競争防止法2条1項14号においては、
「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」
を不正競争としており、侵害かどうか微妙な事案について侵害と断定した侵害警告文を送付することは、
「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布」
する行為と判断される危険が生じるのです。

したがって、侵害警告を行う上では、侵害したとされる商品が特許請求の範囲に抵触したものといえるかどうかなどを十分調査することが必要ですし、また侵害を直接行った企業の取引先企業に不用意に警告を発出しないようにすべきです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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