01291_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説

「ヒト」「モノ」「カネ」「情報・技術・ノウハウ」
といった各経営資源を調達・運用した企業は、企業内部に
「商品在庫や役務提供のための設備・人員等」
という形で付加価値(未実現収益)を蓄積していきます。

次に、企業は、営業・販売活動によって、これら付加価値(未実現収益)を収益として実現していくことになります。

そして、このような営業・販売活動は、営業相手先(販売先)の属性によって、2つに分類されます。

すなわち、企業が行う営業・販売活動は、相手先が企業の場合(コーポレートセールス)と、消費者の場合(コンシューマーセールス)との2種に大別されますが、それぞれに対して、異なる規制目的から異なる法規制が整備されています。

つまり、コーポレートセールス(法人向営業)に対しては、能率競争、すなわち
「価格と品質による競争」
を活性化させることを通じて国民実質所得を向上させるという目的から、独占禁止法(独禁法)によって反競争的行為が禁止されます。

他方、コンシューマーセールスに対しては、
「企業に比して、情報・取引能力において圧倒的劣位に立たされる弱者である消費者」
を保護することにより消費者と企業との取引の実質的公平を図る、という観点から、消費者基本法、消費者契約法や特定商取引法等の規制が整備されています。

企業の営業活動に関しては、以下のような整理を前提に、
「独禁法実務」
ではコーポレートセールス(法人向営業)とこれに対する規制法である独占禁止法を巡る法務課題について述べていきます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

コーポレートセールス、すなわち営利活動が企業間で行われる場合を考察しますと、当然ながら売手企業・買手企業において、その利害は厳しく対立します。

すなわち、モノやサービスを販売する側の企業は買手に対し、より高く、より大量に、より早期に買ってもらうことを求めます。

他方、モノやサービスを購入する側の企業は、より安く、必要最小限度のみのロットで、必要とされる時期の直前に調達しようとします。

自由主義経済体制下にあるわが国では、契約自由の原則に基づき、このような企業間の取引交渉は、企業間の自主的かつ自由な交渉に委ねられています。

すなわち、より交渉力のあるところが、よりクレバーな対応をしたところが有利な取引条件を勝ち取ることができ、交渉の結果である契約は、自己責任の帰結として法的に双方を拘束するのです。

しかし、営業・販売活動が自由であるとしても、モノやサービスを提供する側がカルテルを形成してお互い競争を回避するような場合や、巨大メーカーが経営規模の小さい問屋や販売店に不当な取引条件を課するような場合は、反競争的行為として、独占禁止法による厳しい規制が働きます。

このように、コーポレートセールス(法人向営業)においては、一方で契約自由の原則が働く反面、公正な競争秩序が破壊され、あるいはその前提が崩れているような場合には、独占禁止法が取引の自由に介入し、特定の反競争行為を排除し、あるいは課徴金を課す形で強制的に修正を加えます。

無論、談合や不正入札に関しては、排除・課徴金といった独占禁止法上の制裁に加え、入札資格の剥奪(指名停止処分)や担当者の逮捕・刑事裁判等の問題、さらには報道機関の報道による企業イメージの低下など、深刻な法務トラブルを招きます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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