01297_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>企業結合規制

企業結合への規制については、一般集中規制と市場集中規制の類型に分けられます。

1 一般集中規制

一般集中規制は、市場における個々の競争制限ではなく、
「事業支配力の過度の集中」
を問題とします。

つまり、特定の市場における競争力の減殺等を問題にするのではなく、日本において、戦前の財閥のように富が集中する企業が存在することで、経済的・政治的民主主義が損なわれることのないようにとの趣旨で規定されています。

競争の制限による具体的弊害の有無を問うことなく、日本市場のみに着目して課されるこの規制は、存在意義が薄弱とも思われ、また、国際的な競争力の獲得と矛盾するとも考えられることから、実務上はほとんど問題となることはありません。

市場集中規制は、個々の市場における競争の実質的制限を問題として企業結合への規制を考慮するものです。

2 市場集中規制

特定の商品が想定される特定の市場において、競争関係にある企業が結合することで、当該市場における競争が行われなくなることを危惧する規制です。

これは、能率的な競争が行われることこそ、国民に、安く品質のよい商品やサービスが届けられるという考えに支えられたものといえます。

2009年改正では、諸外国との調和や審査の効率化等の観点から、事前届出制の導入がなされています。

当該規制に関する実務処理の特徴としては、ガイドライン(「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」等)が参考になります。

企業結合に関する公正取引委員会の取扱いの特色として、その計画を有する企業が事前に公正取引委員会にその是非を
「事前相談」
という形で打診し、その事前の審査においていわゆる
「問題解消措置」
等が示されるなどといった事実上の手続が存在したことを挙げることができます。

しかしながら、この
「事前相談」
制度については、法律に基づくものでもないのに、事前相談で消極的意見を表明されることでM&Aを断念するなど、事実上の審査機能があったこともあり、不透明だなどと批判されてきました(法的根拠のない、単なる“行政サービス”である、との位置づけとされてきました)。

そこで、届出手続がなされた後に、法定の審査がなされるという手続に一本化することで、企業結合審査の期間短縮と透明化を狙った改正が決定されています(同改正は、事前相談制度が元来法律に基づくものでもなかったため、公正取引委員会内の事務上の取扱いの変更に過ぎず、法律改正がなされるわけではありません)。

事前相談手続廃止後は、上記ガイドライン等を参照しながら、企業は自らの判断に基づいて、当該M&Aが独占禁止法上規制されるべきものかどうかを判断する必要があるといえ、企業結合規制に関する法的知見は、M&Aを進める上で必須のものといえるでしょう。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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