01305_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>審査後の手続

審査後に関しては、審査が打ち切られる場合(不問に付される場合)や注意・警告等の是正指導で終了する場合のほか、排除措置命令や課徴金納付命令の発令のための事前手続に移行する場合があります。

これら事前手続に移行したことは、排除措置や課徴金納付の事前通知によって認識されます。

この通知は、排除措置命令や課徴金納付命令の予告としての性格を持つもので、その後、被審人の意見申述、証拠提出を経て、各命令が発令されます。

被審人の意見申述、証拠提出の機会は最大限活用すべきです。

事実関係について争いがあれば当然ながら積極的に否認し、反論し、反対証拠を提出すべきです。

また、事実関係がほぼ同じでも、例えばカルテルの指揮・実行の主体性や関与の度合い等いわゆる情状面について実態と異なる事実を審査官が主張するような場合も当然争うことになります。

独占禁止法に関するコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)の活動内容との関係も、審査争訟弁護を通じた企業防衛と大きく関係してきます。

企業の中には、独占禁止法違反行為を抑止するため、企業内従業者性悪説に立脚し、適正なリスク・アプローチに基づく効果的な内部統制ステムを構築・運用しているところも多く存在します。

このような内部統制システムがあるにもかかわらず、営業現場の担当者や従業員が独自の判断ないし勇み足でこれに反した行動ないし取引を行った場合には、企業の責任ではなく、個人のスタンドプレーということになり、実体・情状両面に大きな影響を及ぼし、企業の責任が消滅ないし軽減される余地が出てきます。

このような意味で、独占禁止法違反を予防・防止・検知するための内部統制システムの概要や運用(教育・研修、内部通報システム、監査等の実施状況)の実態も積極的な防御の一部として主張すべきです。

公正取引委員会の審査官の活動が、常にかつ絶対的に適法・適正とは限りません。

公正取引委員会の命令を受けた審査官の審査処分(強制立ち入り、出頭命令、提出命令等の各処分)が適正手続(憲法31条)に反する形もしくは極めて不当な形で行われる場合があります。

特に、犯罪調査の一貫として犯則調査が導入され、刑事司法としての犯則調査と行政目的での一般審査が厳格に区別されるようになりましたが、ときにこの両手続が審査の現場や犯則調査の現場で区別されずに各権限が行使されることも想定されます。

万が一、適正手続に反する形で審査が行われるようなことがあれば、刑事訴訟法上の違法収集証拠排除則や毒樹の果実理論を全面展開し、かかる違法手続により得られた証拠に基づきあるいは関連する各命令を排除するための弁護活動も検討されるべきです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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