01323_債権管理・回収法務>債権管理・回収法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

支払を遅滞する債務者にも、様々なタイプがありますので、タイプごとに対応を検討する必要もあります。

1 単純引き延ばし型債務者への対応

支払原資を欠くわけではないにもかかわらず、
「支払いの決裁権者が不在」、
「上司から請求書が下りてきていない」
といった言い訳をする債務者の場合、支払の優先順位が相対的に下げられている可能性があります。

対応法としては、支払期日が近づくごとに、ファクシミリ等で支払期限の確認を行うなどしてプレッシャーを与えるべきです。

また、
「アメ」と「ムチ」
を使い分ける方法も有効です。

すなわち、
「アメ」
としては、金銭債務を前倒しで支払う場合に割引等のインセンテイブを付与したりして、支払の優先順位を上げさせる工夫をするのも有効な手段です。

他方、
「ムチ」
としては、支払遅滞した相手については、次回取引を留保したり、値引きその他で不利に処遇するなどの方法があります。

さらに、相手が優越的地位に立ち、この立場を濫用しているような状況であれば、公正取引委員会に相談してみることも有用です。

2 “因縁つけ”型債務者への対応

支払期限の直前になって
「注文と異なる」「品質が悪い」
といったクレームをつけ始めるケースです。

債務者が、いわば
「因縁をつける」
ことで、支払いを引き延ばそうという場合です。

これについては、注文スペックと違う点や、品質に関する先方の主張を、文書で提出させるべきです。

そして、その際、クレーム提出期限を明確に区切り、
「期限内に文書にてクレームが出なければ、異議なく検収・納品されたものと考えます」
と付記しておくことも重要です。

虚偽のクレームを文書にできるほど腹の据わった債務者は稀であり、期限内に、
「分割払いにして欲しい」「値引きをお願いしたい」
といった形で真の意図を開示し、円満に話し合いをする環境が形成できる場合もあります。

3 不当応訴型債務者の場合

中には、訴訟等の民事手続を行わない限り支払いを行わない債務者も存在します。

このような場合、支払督促や訴訟等の手続を実施せざるをえませんが、実際上は、回収までに多大な費用と時間と労力を要することになりますし、勝訴判決を獲得したところで、既に資産が散逸してしまっていたり、巧妙に隠匿されてしまっていれば強制執行による回収もできません(なお、このような単なる債務不履行事案を詐欺罪で立件することも、法理論上可能ですが、現在の警察実務を考えると、実際問題としては、告訴の受理・立件の可能性は極めて乏しいといえます)。

このような場合、金銭債権の回収不能を理由とする損金経理等、税務上の利点を確保する方向にシフトチェンジすることも検討すべきです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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