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1 連邦制度

米国は連邦制度を採用しており、それぞれの州には、一定の範囲に関する立法権が与えられています。

他方、連邦議会は、米国憲法のArticle I Section 8(第1条8節)などによって定められた範囲においてのみ立法する権限を与えられています。

具体的に言いますと、破産や知的財産に関する法律は、連邦議会による立法権の管轄下にあります。

米国憲法によって連邦に委任されず、また、州に対して禁止されていない権限については、それぞれの州ないし人民に留保されています(米国憲法修正10条)。

したがって、各州において、 日本の民法、会社法、刑法などに相当する法律が決められており、かつ、それぞれの州ごとに最高裁も含む裁判所が存在し、独自に裁判例が積み重ねられています。

2 「連邦制度」が有する意味

米国の実態は、連合国家であり、国際法社会のミニチュア版です。

米国の弁護士が多い、というのは、実は、米国自体では、各州が主権国家並の立法権を有しており、州ごとに法的取扱が異なるからです。

「アメリカは法律先進国」
などと呼称する方もいるようですが、アメリカ法の実態を考えると、状況を正しく表した評価とは思えません。

たとえて言うなら、アメリカは、
「江戸時代の幕藩体制がいまだ続いているような、ある種、統一国家としての近代化がいまだ完了していない国家」
といえます。

すなわち、アメリカの法制度は、国内レベルで中世封建的なモザイク型法社会が絶望的な形で蔓延しており、近代統一国家としてのリフォームが完了した日本と比べると、取引を支える法律インフラが貧弱であり、
「無駄と非効率」
としか評しようがありません。

日本で言えば、鳥取県が鳥取民法をもっており、島根県も島根民法をもっており、それぞれが独自に司法機関(「鳥取県最高裁判所」とか)をもっており、弁護士にも県ごとに資格が定められ
「鳥取県弁護士」

「島根県弁護士」
がいる、という異常な状況を想像していただければ理解いただけるかもしれません。

3 アメリカの法体系の負の側面

日本において、近代国家に至るプロセスにおいて、戊辰戦争や西南戦争といった内戦を経て封建的体制が一掃され、国を貫く統一的な法律インフラが整備されました。

ところが、アメリカは、内戦(南北戦争)を経てもなお、分散した州の権限を合理的に集約し、整備統一化することができませんでした。

そのため、現在のような法制度や裁判制度の統一性における致命的欠陥を抱えた状態になっているのです。

以上のように、
「法律先進国」
どころか、度量衡(アメリカにおいては、10進法に基づかないヤード・ポンド法がいまだに使用されています)や紙の寸法規格(“何回半分に折っても永久に相似形が保たれる”国際的規格であるISO216ではなく、独自のローカル規格を頑なに固持)と並び、アメリカの法体系は、不合理で、時代遅れも甚だしい代物、ということができます。

いずれにせよ、アメリカに進出をしたり、アメリカ法に準拠した取引を実施する場合、アメリカはこのような複雑で非効率ともいえる法令環境を有している、ということを十分理解しておく必要があります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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