01536_企業において「妙な外来語」が飛び交うとき、その企業は危険な兆候に陥っている_4_節税商品、節税スキームあるいは会計スキーム

最後に、妙な外来語や専門用語や突如企業に舞い込むケースとして、節税商品あるいは節税スキームというものも想定されます。

数年前、興行用の映画フィルムを使った節税商品など、民事組合のパススルーシステム(組合の損金を直接自己の損金として計上できる)を利用して、
「損金を買う」仕組の商品
が流行ったことがあります。

映画フィルム以外では、飛行機や船を使ったリース事業を行う組合を作り、やはりパススルー制と組み合わせて損金計上するような商品(レバレッジド・リースと呼ばれます)もありました。

どれも
「机上の」税務理論
としてはよく考えられていて、一見すると、効果的な節税ができそうです。

しかし、こういう
「実体の希薄な商品を使った、税務行政にケンカを売るような強引な損金処理」
を、日本最大の暴力団ともいいうる税務当局が笑って受け入れてくれるほど世間は甘くありません。

案の定、どれも、みかじめ料ならぬ税金を不当に過少に収めてやり過ごそうとする不逞の所為について、税務当局と大モメにモメ、裁判所を巻き込む大喧嘩に発展しています。

結論を言いますと、飛行機や船を用いたレバレッジド・リースは事業実体ありということで損金計上が認められ、最高裁もこれを容認しました。

映画フィルム債の方は、フィルムが事業のために用いられているような実体がないということで、最高裁は税務署の更正処分と過少申告加算税賦課処分を認める判断をしています。

こういう裁判所の判断だけを短絡的に見ると、
「飛行機と船はOKで、節税できたからいいじゃないか」
なんて簡単に考えてしまいそうです。

しかしながら、税務署とのトラブルに巻き込まれた(最高裁までもつれこんだわけですから、事件に投入された時間やエネルギーや弁護士費用などはハンパなものではないでしょう)、という点では、飛行機や船のリース事業に参加した場合であっても相当シビアなリスクにさらされた、と見るべきです。

商品を売る側は、いかにも
「節税プランは完璧です」
ということを、セールストークで謳います。

ですが、売る側の金融機関は、売った後に顧客がどんな税務トラブルを抱えたとしても、
「損金計上できると判断するか、損金計上できると判断するとして、実際損金計上するかどうかなどは、すべて自己責任だから、関知しない」
という態度を取るものです(もちろん、同情はしてくれたり、紛争対策のための税理士や弁護士を紹介してくれることはあっても、決して手数料を返したりはしてくれません)。

「いい話にはウラがある」
という警句は、実に的を得たものです。

たとえ、
「売り込む側が、仕立てのいいスーツを着て、高価なネクタイをぶら下げ、学歴が高く、名の通った金融機関に勤めている」
という事情があっても、セールストークを鵜呑みにするととんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。

外来語や専門用語が散りばめられ、横文字で大層な商品名が書いてあったとしても、会社が購入するのは、シンプルに言えば
「税務当局とのケンカの種」
に過ぎません。

フツーに商売するのですら困難な時代に、税務当局と大喧嘩して、企業がまともに生き残れるほど甘くはありません。

一般的に申し上げて、節税にエネルギーを使う企業は、健全な成長・発展してきちんと納税する企業との比較において、短命と言えます。

企業が節税商品に手を出すのは、方向性としても、実際問題としても大きなリスクがあり、企業生命を危うくするものと考えられます。

運営管理コード:YVKSF192TO197

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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