01560_ウソをついて何が悪い(10)_ ホリエモンとムラカミさんその3_「ウソをついたホリエモン」と、「ズルをして儲けたムラカミさん」の最終処遇の差

強烈な個性を露出させ、挑発的な言動を繰り返し、それまでの産業界が思いもつかなかった“あざとい”手法で事業を急成長させ、時代の寵児となったホリエモンと村上氏ですが、同じ頃に逮捕・起訴され、有罪判決を受ける、という結末を迎えました。

憎まれ口をたたき続けた、憎まれ役だった2人ですが、
「憎まれっ子、世に憚る」
という諺のようにはいかず、司法の手によって断罪されてしまいました。

「巧言令色、鮮なし仁」
ともいいますので、私個人としては、
「“本音を腹蔵なく言えるような希有な方のちょっとした心得違いを、よってたかって、不必要なまでに袋叩きにする”といった日本社会のあり方」
にはやや否定的であり、
「皆が、言いたいことを、言いたいように言えるようにしていくべき」
とも思うのです。

とはいえ、
「ヤンチャが過ぎた」
といわれればその通りですし、
「普段から社会を敵に回る言動を果敢に行うなら、この種の落とし穴には、もっと警戒すべきだった」
ともいえます。

ところで、同じく
「有罪判決を受けた」
とは言え、
「ホリエモンは実刑判決を受けて刑務所に収監され“臭い飯を食う”羽目に陥りました」
が、反面、
「村上氏は執行猶予判決にとどまってシャバでの生活が許される」
こととなり、最終的な処遇に関しては天と地ほどの差が生じました。

社会に衝撃を与えた大事件を惹き起こしながら、2人の最終的な刑罰が、なぜこのように違うことになったのでしょうか?

同じ
「東大卒」
とはいえ、
「東大文一(文科一類 )・法学部卒のムラカミさん」
は裁判官の覚えめでたく、
「東大ブンゾー(文三・文科三類)・文学部中退のホリエモン」
は不出来で、不真面目と思われて、裁判官の忌避を買ったのでしょうか?

あるいは、ベンチャー上がりのホリエモンと違い、村上氏は元経済産業省勤務の官僚で、相当期間国に奉仕した、ということが評価されたのでしょうか?

それとも、村上氏がいつもスーツとネクタイを着用し紳士然としていたのに比べ、ホリエモンがいつもTシャツにジーパン姿だったので、
「堅物の裁判官」
の印象が悪かったからでしょうか?

ここで、両事件を整理してみます。

ごく簡単にいえば、ホリエモンが犯した罪は
「ウソをついたこと」
であり、村上氏が犯した罪は
「ズルをして儲けたこと」
と整理されます。

これまでの本連載で述べてきたリテラシーを前提とすれば、日本の社会において
「ウソをついたこと」
は大したことではなく、むしろ、
「ズルをして、自分だけ巨額の儲けを得たこと」
の方が、悪質性が高いような気がします。

そして、この理を敷衍(ふえん)すれば、
「隠れてズルをして巨額の利益を手にしようとした村上氏こそ実刑判決が相当であり、若気の至りでちょっとウソをついてしまったホリエモンは執行猶予判決で許してあげてもいいんじゃないか」
といった話が浮上してもよさそうな気がします。

しかしながら、この
「ウソをついたホリエモンが実刑判決を食らい、ズルをして儲けた村上氏が執行猶予判決に留まった」
という現象は十分な理由と根拠があるのであり、これを説明する過程において、
「ウソに寛容な日本社会においても、絶対許されないウソ」
というものが浮かび上がってくるのです。

運営管理コード:HLMGZ17-3

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです