01563_ウソをついて何が悪い(13)_「ウソついたら、ハリセンボン級のペナルティ(重罪犯か罰金100億円)」のアメリカその1

これまで見たきましたとおり、我がニッポンでは、ウソに寛容で、裁判でもウソはつき放題で、偽証罪すらまともに処罰されることなく、もはや、
「裁判でウソをつかない奴の方がバカ」
ということを国家が暗に認めるような、そんな
「ウソ天国」
です。

では、
「ウソ天国」
は世界の常識で、
「ウソついたとしても痛くも痒くもないし、ウソをつかない奴の方がバカ」
というメンタリティは、世界でも通用するのでしょうか?

答えは、NOです。

完全にNOです。

ここで、アメリカを例にとってみてみます。

「カルテルは違法」
という意識が低く、リスク管理がおざなりの日本企業を狙い撃ちした方が摘発しやすいからでしょうか、米司法省反トラスト局から、独禁法違反のカドで日本企業が狙われるケースが多いようです。

米国政府の意図は不明ですが、自動車部品カルテル等では、名だたる日本企業に、軒並み百億円単位の課徴金が課されています。

しかしながら、今どき、カルテルを書面で合意するようなドン臭い企業はないはずです。

その意味では、価格や数量の合意の存在を基礎づける直接の証拠はなく、独禁法違反を
「合理的疑いを容れない程度にまで」
立証しようとすると、捜査機関は合意が疑われる時点から相当範囲のコミュニケーションをつぶさに調べ、間接事実を積み上げないと捜査が前に進みません。

しかも、このコミュケーションは、当然日本語がほとんどですし、しかも、とかく意味不明で含みのある曖昧な日本語の言語としての特徴に加え、業界特有の符牒等も使われることもあり、アメリカの捜査機関の方々がこのような言語的・非言語的障害を乗り越えて、独禁法違反を
「合理的疑いを容れない程度にまで」
立証するなど、ちょっと想像できません。

ところが、この話には、ウラがあります。

というのは、独禁法違反を疑われた日本企業で、米司法省から、公判手続でガチに争われ、結果、司法省によって、独禁法違反が
「合理的疑いを容れない程度にまで」
立証された、という例はほぼありません(少なくとも、私は、寡聞にして知りません)。

じゃあ、なぜ、多くの日本企業が、独禁法違反をしたとの理由で、軒並み百億円単位の課徴金をされるのでしょうか。

これは、
「独禁法違反をした」
という事実が司法省によって独禁法違反が
「合理的疑いを容れない程度にまで」
立証されたから、ではありません。

多くの日本企業が、独禁法の捜査のプロセスにおいて、
「ウソに寛容なニッポンの捜査手続きや裁判手続き」
のノリで、気軽に、いい加減に、適当にウソをついてしまい、これが致命的なミスとして急所を押さえられ、司法取引において、泣く泣く、あるいは不承不承、
「独禁法違反をした」
という事実を認めさせられるからです。

そして、さらにこの背景には、アメリカの捜査手続や司法手続における、日本とは真逆の、
「ウソ」
を絶対に容認しない、厳しい法制度と法運用実態があるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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