01574_企業(株式会社)は生まれてすぐに、ハンデなしのガチンコ競争社会に放り込まれる(1)_人間の場合における未成年者保護制度

人間の場合、新生児は非常に未熟な状態で生まれてきますし、生まれた後も大人になるまで、周りがいろいろと世話を焼いてやらなければなりません。

このように実生活において、子供が大人による保護の対象となっているのと同様、法的な意味においても、よちよち歩きの赤ん坊や幼児、学生等の
「未成年者」
については、保護の対象とされています。

人は、生まれてから、即、
「権利能力」
が付与されます。

法律用語で
「能力」
というと、特定のことができる
「資格」
を意味し、
「権利能力」
とは、
「権利を行使し義務を負う主体」
となることができる資格をいい、この世のすべての人間がこの
「権利能力」
を有しています。

といっても、まったく意味不明ですよね。

「権利能力」
とは、要するに、
「そいつの名義で財産が持てる」
「そいつの名義でモノを買ったり売ったりといった取引ができる」
という程度の意味と考えてください。

「赤ん坊が咥えているバブバブ」

「小学生が持っているランドセルやリコーダー」
は、その小学生の持ち物であって、親が所有して子供にリースしているわけではありません。

これは、未成年者が権利能力を有する、という制度が前提となっているのです。

「未成年者ごときが財産を持つのはケシカラン。テメエら半端者は、大人の所有物を借用しておけば十分じゃ」
という制度も想定可能ですし、昔はそういう感覚であったかわかりませんが、現代では、子供も大人も、みな等しく、財産を持ったり、モノの売り買いができる、という制度となっています。

他方、
「未成年者」
には
「『行為』能力」
がない、といわれます。

「行為能力」
とは、契約を結ぶといった、財産に関する法律行為を単独で行うことができる法律上の資格のことです。

これもわかりやすくいうと、
「ガキには、一人でデカイ取引をさせない」
という意味です。

そして、この
「行為能力の制限」
を通じて、民法は、未成年者を厳しい大人の取引社会から保護しているのです。

なぜ
「未成年者」
が法的に保護されているかというと、例えば、未成年者が借金をしようとしても、借金をした場合、条件によっては、利息ばかりが膨らみ、元金の返済にとりかかる前に、利息分の返済だけで何年もかかる場合があるということを、十分に理解した上で借用書にサインするかというと、なかなか難しそうです。

未成年者は、自分が負うことになる義務についてのリスクを判断する知識や経験が少なく、それにもかかわらず
「自己責任」
と言い切って、自分がしたことの全責任を負わせてしまうのは、いささか可哀想です。

このあたり、成人でも、心許ない方も大勢いらっしゃるような気もしますが・・・。

このような観点から、未成年者を保護するために、未成年者が
「法律行為」
を行う場合には、原則として、保護者の同意(=許可)を得なければならないとされており、同意を得ていない場合は、その行為を取消すことができる、とされています。

なお、もう少しややこしい話をついでにしますと、
「権利能力」

「行為能力」
のほかに、
「意思能力」
という概念もあります。

これは、自分の行為がどのような結果をもたらすのかを判断できる能力のことです。

「未成年」

「成年」
とが20歳で一律に区切られているのと違い、ケースバイケースですが、一般的には、10歳程度で意思能力ありとされています。

まとめますと、

1)赤ん坊でもガキでも、テメエの名前で財産を持つことは許してやる(権利能力)。
2)とはいえ、一人で取引社会の鉄火場で火傷を負うのはあまりに可哀想だから、親の同意なしに取引をやっちまった場合、「え、ウソ。そんな。ちょっと、タンマ。やっぱ、あれナシにして」という泣き言を認めてやる。ガキと取引する大人連中も、親から同意をもらっていないガキは後から「待った。やっぱ、あれナシ」とか吐かす可能性あるから、そのあたり、しっかり確認しておきな(行為能力)。
3)10歳以下のオネショするようなガキは、まったくワケわかってねぇから、親の同意があっても、そもそも「取引」なんかできねぇから、こいつら一切相手にするな(意思能力)。

という形で、未成年者が、ガチンコ勝負の過酷な取引社会から保護される仕組みが存在します。

(つづく)

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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