01602_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(5)_海外進出に成功する企業の手法その1_「海外進出の真の目的」の設定

具体的に、アジア進出に成功する企業は、どのようなビヘイビアで、その目的(具体的な言葉にすると、やや問題を生じかねないので、あえて言葉にしませんが、植民地時代の欧米列強諸国の企業の進出目的ないし動機とほぼ近似するようなもの、と述べるにとどめます)を達成するのでしょうか。

アジアに進出するのは、経済的メリット、それも
「目まいを起こしてぶったおれるくらいおいしいメリット」
があるからです。

別に、
「悠久の大自然をもっている」
から進出するわけでもない(はず)ですし、
「長きにわたる歴史や文明・文化があり、これをリスペクトする」
から進出するわけでもない(はず)ですし、
「先の戦争でご迷惑をおかけしたので、そのすまない気持ちから、罪滅ぼしのため」
に進出するわけでもない(はず)ですし、
「同じアジア人同志仲良くしたいから」
というわけでもない(はず)
です。

上記のような、
「意味不明な」
あるいは
「ヌルい」こと
を考えて進出する企業は、軒並み大失敗して、痛い目に遭ったり、生き地獄をみたり、会社の死期を早めています。

営利追求を至上のミッションとする合理的組織である企業が、時間をかけて、空間的距離を克服して、わざわざ遠くの国まで進出する目的は、シンプルにいいますと、
「ホニャララくんだりまで行くコストや手間」
を遥かに上回るメリットがあるから、というのがその理由であるべきです。

要するに、カネです。

ソロバンです。

商売です。

ビジネスです。

身も蓋もない言い方をすれば、
「海外に進出するのは、国内よりシビレルくらい安く労働力が手に入ったり、競争が死ぬほどラクちんだから」
というのが合理的理由となるべきはずです。

すなわち、
「進出に成功する企業」
のマインド(無論、こんな本心は絶対明かしませんので、推察するほかないのですが)としては、

「 『植民地時代』において、列強諸国の資本家が、
『アジアその他の植民地に進出すると、劣等民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)を奴隷労働力として廉価に活用できたり(工場等を作って、生産資源として活用する場合)』あるいは、
『文明レベルの劣る民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)に対して、圧倒的な価値と希少性を有する商品・サービスを提供することを通じた、市場争奪、支配が可能である』
ことを前提として進出した 」

のと類似あるいは近似しているものと推察されるところです。

このように、非常にシビアな功利的メンタリティーにもとづいて
「エゲツナイまでに経済合理性に適った目的」
を設定・構築し、当該目的(それこそ、平等な国際社会や差別なき世界の実現を目指すようなヒューマニストが聞いたら、その場で卒倒しそうな、しびれるくらいエグく経済合理性を徹底した進出目的)を強固に意識して進出するような企業こそが、海外進出に成功する企業である、
ということができます。

初出:『筆鋒鋭利』No.100-1、「ポリスマガジン」誌、2015年12月号(2015年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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