01605_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(8)_海外進出に成功する企業の手法その4_海外進出成功企業の戦略・まとめ

海外進出に成功する企業においては、登用されるリーダー(責任者)のスペックにおいて、共通する要素があります。

そして、その前提として、リーダー(責任者)が果たすべきタスクについて明確かつ具体的なデザインが先行しています。

さらにいえば、明確かつ具体的なタスク・デザインのための必須の先行ないし前置課題として、進出目的が明確かつ具体的に定められています。

すなわち、海外進出に成功する企業には、必ずといっていいほど、
「東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』」のような人材、
すなわち、(くどいようですが再言しますと)

【設定・構築目的において】
「『植民地時代』において、列強諸国の資本家が、『アジアその他の植民地に進出すると、劣等民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)を奴隷労働力として廉価に活用できたり(工場等を作って、生産資源として活用する場合)』あるいは、『文明レベルの劣る民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)に対して、圧倒的な価値と希少性を有する商品・サービスを提供することを通じた、市場争奪、支配が可能である』ことを前提として進出した」
のと類似あるいは近似した、非常にシビアな功利的メンタリティーにもとづいて「エゲツナイまでに経済合理性に適った目的」が設定・構築されていることを前提として、

かつ、

【設定・構築目的達成のために設計された基本的タスクにおいて】
「1 現地の人間になめられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する」
「2 強烈な強制の契機をはらんだ圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、植民地時代ではないので、支配的な要素はおくびにも出さないように努め、極めてジェントルかつエレガントに、スマートな形で実効的支配を展開する)」
「3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を敷く」
「4 客観的基準と合理的観察によるエゲつない能力差別を行ない、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する過酷な懲罰を徹底して行う」
「5 独禁法を愚弄する精神で、競争者の存在を否定し、あるいは新規参入の目を容赦なく摘む形で、市場を迅速かつ圧倒的に支配する(つもりで頑張る。実際は法令には触れないように細心の注意を払う)」
「6 このような市場支配(を目指した、法に触れない経済活動)を、大量のカネ、物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準にしたがって、効率性を徹底追求して行う」
という各タスクを成し遂げるというミッションを明確に理解・把握し、

【基本的タスクを遂行しうる人材スペックにおいて】
1 前記1から6の「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」を、命を賭して、完全に成し遂げる強靭な意志と、
2 前記1から6の「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」を、 一定の冗長性(リスクや想定外に常に対応しうるための時間的・経済的・精神的冗長性)を確保しつつ、涼しい顔して、平然かつ冷静にやり抜けるだけの知識・経験・スキルと、
3 「成功時に得られる、鼻血が飛び出るくらい、旨味があるインセンティブ」を設計して、臆面もなく要求するだけの豪胆さと、当該インセンティブに対する健全な欲望と、
4 声一つ発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラと、
5 悪魔の手先のような性根と、
6 遂行しているタスクの毒々しさを全く感じさせることなく、常に、ジェントルかつエレガントに振る舞える典雅さ

といった要素ないしスペックをすべて実装した
「海外進出を成功させることの出来る、しかるべきリーダー(責任者)」
が存在し、当該人材に委ねることができるからこそ、海外進出に成功するのです。

上記のような
「東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』」
によって経営されている外資系企業が、どの企業も、例外なく、順調にあるいはしびれるくらい儲かっている、という
「帰納的に確認できる経験上の事実」
と照らし合わせて考えてみてください。

ご理解いただけますでしょうか?

海外進出に成功する企業には、成功するだけの明確な根拠と理由があるのです。

要するに、
海外進出目的が合理的に設計されていて、かつ明確に意識されており
目的を実現するための基本的なタスクイメージもしっかりと具体化されており
・各タスクを実践する人材スペックが明瞭であり、
・当該人材を発掘・発見・調達でき、
・当該人材が遺憾なくスキルを発揮できるような物的環境(予算や報酬やインセンティブ)を整備できる
からこそ、海外進出に成功するのです。

逆に、
「海外進出に失敗する、残念な企業」
というのは、前記のような目的もタスクも人材スペックも明確にしたり、整理していません。

目的もあいまいなまま、目標も実施戦略もロクに立てず、
「しかるべきリーダー(責任者)」
などいません。

むしろ、上記のような
「海外進出に成功する企業」
とは真逆に、企業として、
「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」
などといった愚劣で不可解な目的しか持たず、
「金儲け」「商売」
を真摯に追求する気概も能力もなく、さらにいえば、
「そもそも『何をしたらいいか』すらさっぱりわからない適当な人間」

「すべてにおいて、ぬるく、曖昧で、適当なこと」
をさせるから、失敗すべくして失敗するのです。

以上のような観点・視点から観察すると、日本企業の多くが、海外進出、アジア進出、中国進出にことごとく失敗するのも当然至極であり、「史上空前の進出ブームの後に訪れた、これまた史上空前の撤退ブーム」などという、愚劣にして蒙昧なニッポン企業の動向
「さもありなん」
といった感があります。

初出:『筆鋒鋭利』No.100-4、「ポリスマガジン」誌、2015年12月号(2015年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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