01648_法律相談の技法14_継続法律相談(1)_継続法律相談のゴール

課題達成(解決)のための選択肢が浮上し、各選択肢についての動員資源の見積もりができれば、相談者は、それぞれの選択肢のプロコン(Pros and Cons、長短所)分析をして、当該見積りと期待値との相関性を考えながら、

1 アクションを起こさない(泣き寝入りする)

2 何らかのアクションを起こす
1)創出・整理された選択肢(メニュー)の中から選ぶ
2)どれを選ぶにしても納得出来ないので、新たな選択肢を探して、「自分にとって都合のいい秘策」がどこかにある、との主観(妄想)を前提に、「当該秘策を持っている別の優秀な弁護士」なるものを探す旅に出る

3 決定を先延ばしにする

のいずれかの態度決定をして初回法律相談が終了します。

そして、初回法律相談において、2の1)、すなわち
創出・整理された選択肢(メニュー)の中から選ぶ
という態度決定をした相談者には、再度足を運んでもらい、継続法律相談のプロセスに移行することになります。

初回法律相談のゴールは、
「アクションを起こさない(泣き寝入りする)か、アクションを起こすとして相談した弁護士に依頼するか、アクションを起こすが別の弁護士を探すか、決定を先延ばすか」
という
「態度決定」
です。

他方で、継続法律相談のゴールは、
「アクションを起こすこと」

「当該アクションを相談した弁護士に依頼すること」
をそれぞれ態度決定した相談者に対して、
1 「相談者と弁護士の役割分担を理解させ、相談者のタスクとして、『詳細事実経緯のミエル化・カタチ化・言語化・文書化及び痕跡の収集・発見・整理』を宿題として課して、これを責任を以て完遂させる(自力で完遂させることが困難であればしかるべき費用を負担して支援を依頼する)」
2 「詳細な見積もりを提示して、報酬契約を締結する前提を整備する」
3 「相談者・依頼者の決意にストレステストを加え、覚悟のほどを確認する」
というコミュニケーションを行うことにあります。

初回相談においても、事実関係を確認したり、ゲームの環境、ロジック、ルール、相場観及び展開予測を伝えたり、選択肢を整理したり、各選択手段の見積もり(粗見積もり)を提示したりしますが、これは、あくまで
「態度決定」
のためのプロセスと行われるものです。

事件や今後の展開について、法的にああなる、こうなる、こうなるべきだ、こうする方がいい、とアバウトなことを言われても、
「アクションを起こさない(泣き寝入りする)か、アクションを起こすとして相談した弁護士に依頼するか、アクションを起こすが別の弁護士を探すか、決定を先延ばすか」
という態度決定は困難です。

お金がかかるとして、
1万円なのか、10万円なのか、100円なのか、1000万円なのか、
時間がかかるとして、
1週間なのか、1月なのか、半年なのか、10年なのか、
言い分が認められるとして、現実にテーブルの上の現金として積まれる可能性があるのは
10万円なのか、100万円なのか、1000万円なのか、
依頼者・相談者としても相応の協力が必要であり労力負荷がかかるというが、それは
5時間程度で済むのか、100時間なのか、1万時間要するのか、
といった程度のデータがないと、
「目の前の紛争対処について、アクションを起こさない(泣き寝入りする)か、アクションを起こすとして相談した弁護士に依頼するか、アクションを起こすが別の弁護士を探すか、決定を先延ばすか」
という基本的意思決定は困難です。

初回相談においては、以上の基本的意思決定に必要な程度と限度において、アバウトな見込みや予測を披瀝し、相談者の態度決定を支援することが目的となります。

他方、継続法律相談においては、具体的な作戦、すなわち資源動員計画と役割分担を決定して、動員計画を確定合意すること、すなわち、事件遂行に向けた具体的環境構築活動としての、
「弁護士報酬契約締結(軍資金の調達)」

「依頼者による事実整理と証拠収集を宿題として与え、確実な履行を約束させる(弾薬の調達)」
がゴールになります。

その意味で、継続相談における各種コミュニケーションは、概ね初回相談と同じですが、その密度や粒度が異なり、また、ゴールが
「弁護士報酬契約締結」
「相談者・依頼者の具体的協力内容(宿題)の明示と当該協力遂行の同意」
といった点が異なります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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