01675_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(18)_契約法務

1 契約書のスタイル今昔

00701_契約書のスタイル今昔:ジャパニーズ・クラシカル・スタイルvs.アングロサクソン・スタイル

2 契約が対象とする取引の経済合理性検証

取引の交渉がまとまった、という段階において、改めて、当該交渉によってまとまったとされる
「約束内容」
の具体的内容を確認・明確化するとともに、その内容の合目的性や経済合理性等を精査しなければなりません。

3 契約が対象とする取引の会計税務との整合性検証

(1)前提としての株式公開企業を取り巻く「(二重帳簿ならぬ)三重会計」現象

00702_株式公開企業が行う「二重帳簿」ならぬ「三重会計」とは

(2)会計・税務との整合検証

法的な観点で契約事故・企業間紛争を防ぐ合意内容としては適正であっても、当該契約締結の結果、会計上、税務上の不都合が生じる場合があります。
例えば、物品販売の場合、委託方式か買取方式かによって売り主・買主のどちらが在庫を負担するかが変わってきますし、資産譲渡の価格の決定如何によっては税務上低額譲渡等と認定され、思わぬ課税がなされることもあります。さらに、M&AやSPCを用いたオフバランス取引等を実施する場合も、
「適格要件充足判断において企業組織再編税制の活用が可能か否か」や
「税務上オフバランスと判断されるか否か」
を実例に即して具体的に検証しないと、取引そのもののゴールが達成されない場合もあります。

会計との整合性検証に失敗した具体的事例としては、 不動産流動化にあたっては、会計基準についても慎重に検討すべきところ、検討が不十分で、金商法違反の有価証券報告書虚偽記載とされて、課徴金を取られることもあります。
不動産流動化を実施しても、会計基準が将来どのように変化するか保証はありませんし、想定されているメリットが得られることもなく、トラブルに発展し、粉飾の疑いをかけられる場合もあります。

なお、上記ケースにおいては、会計との整合性検証も失敗した挙げ句、税務的にも想定外の結果となってさらなる失敗となりました。

某家電量販店は、資産流動化スキームに基づき、自らが所有する不動産をSPCに一旦売却した際、会計上、売却取引として認識し、計上した売却益に基づき約26億円の法人税を納付しました。
ところが、証券取引等監視委員会から
「実務指針に沿わない会計処理であり、これは不動産を担保として資金を借り入れた金融取引である」
と指摘されたことに伴い、某家電量販店は、当該売却処理を取り消し、有価証券報告書等を訂正しました。
そして、
「不動産売却益はなかったのだから、納付した法人税26億円は返してくれ」
と、所轄税務署に対し更正請求をしました。
ところが、税務署側は
「金融取引とする理由はない」
との判断を下し、某家電量販店の主張を認めませんでした。
しかも、取締役、監査役、元取締役ら9名に対しては、課徴金相当額および過大に納税した額について支払を求める株主代表訴訟まで提起されました。

なお、 状況は異なりますが、零細企業や地方の中小企業でよくみられるのは、税理士が主導して、
「税務的な整合性『だけ』しか考えておらず、法的にはデタラメな契約処理」
がなされている例が散見されます。
 

4 契約書のチェック

「契約書のチェックの段取りと実務」1~5
「契約書のチェックの段取りと実務」6~11

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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