01712_🔰企業法務ベーシック🔰/企業法務超入門(企業法務ビギナー・ビジネスマン向けリテラシー)23_反社会的勢力に関する法とリスク

いわゆる
「反社会的勢力」
とは
「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」
を指します。

具体的には、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等を指します。

しかし、今どき、この種の
「わかりやすい、ミエミエのヤーさん」
が企業に近づくと、警戒心満々で対応しますし、そんなドギツイ反社会的勢力にうかうかと絡まれるほど、一般の企業も、バカでも迂闊でもありません。

もちろん、反社会的勢力もバカではありません。

パンチパーマに、サングラスに、頬に傷があり、華麗(?)な前科前歴のオンパレードで、ドスの効いた巻き舌のいかつい関西弁で、蛍光色のスーツに白いメッシュの革靴なんて風体で、企業に接触するような愚かな真似はしません。

企業と最初に接点をもつのは、ソフトで、知的で、エレガントで、ジェントルで、きちっとスーツを着て、さらには、最近では学歴武装もきっちりしていて、日本の有名大学や海外の有名大学卒業をしていたり、さらには、海外の著名企業の勤務歴もあったりする、といった経歴をもっているような、そこら辺のサラリーマンよりはるかに優秀で有能そうなビジネスマンです。

とはいえ、そのようなキャリアや風体でも、実体は、反社会的勢力の潜航偵察部隊であり、裏ではがっちり反社会的勢力とつながっています。

名刺や肩書も、昭和の時代のフロント企業のような、ホニャララ興業やチョメチョメ不動産といった、反社臭い企業名ではありません。

ファイナンシャルコンサルタント、海外進出アドバイザー、海外資金運用アドバイザー、節税アドバイザー、セールスコンサルタント、ウェブマネージャー、IPOコンサルタント、ITコンサルタントや、経営コンサルタント、M&Aアドバイザー
といった、いかにも知的でエレガントで、デキそうな肩書や資格で、企業に近づきます。

特に情報弱者の企業のガードが下がりやすい先端ビジネスというのも、企業に接近し、門戸を解放させるアイテムとして活用されます。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、AI(人工知能)、さらには、仮想通貨、仮想通貨マイニング、太陽光発電、タピオカ、新興国投資
といったネタを片手に近づいてくる、社歴が浅く、経歴が怪しく、ぽっと出の、見る人間がみれば胡散臭い新興企業なども、実体をみれば反社だった、ということもあったりします。

このような
「潜航偵察部隊」たる反社会的勢力の関係者
は、
「周辺者」
といわれます。

そして、企業としては、もっともリスク判断が鈍りやすい
「周辺者」
に対する警戒を鋭敏にしておくべき、ということになります。

「周辺者」
は以下のような属性分類がなされます。

1 共生者(反社会的勢力の)共生者とは、暴力団等に利益を供与することにより、暴力団等の暴力、威力、情報力、資金力、組織力等を利用し自らの利益を図る者です。具体的には、暴力団の資金を運用して報酬を得るトレーダーや、節税や脱税、さらには犯罪行為により得た資金をマネーロンダリングする事業者や専門家等を指します。

2 暴力団等の密接関係者これは、暴力団員やその家族に関する行事(慶弔事や、忘年会や新年会等)に出席するなどして、暴力団員等と密接な関係を有していると認められる者です。

3 半グレ(準暴力団)また、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている集団として、半グレ(準暴力団)という組織も「周辺者」として挙げられます。

上記は、いずれも、暴力団員そのものではなく、一見すると、普通の社会人との区別は困難です。

したがって、普通に接点をもち、取引が進んだり、企業内の情報が共有されたりし、深い関係をもつに至り、その後、企業の弱みや恥部や公にできない機密をも共有された段階で、抜き差しならない関係に至り、その後は、恐喝等の餌食になり、食い尽くされる、というシナリオにより企業有事(存立危機事態)に至ります。

その意味では、このような、一般の社会人と見分けがつかない、
「周辺者」
をこそ、警戒できるようリスク感度を向上改善しておくべきです。

以上のように、もっとも重要かつ効果的な反社対応としては、そもそも接点をもたない、ということになります。

そのためには、安易に接点をもたないようにし、また、接点をもつべき企業なり個人を徹底して調べる、きちんとした経歴や信用性がなければ一切接点を形成しない、という対応が肝要です。

そして、万が一にも、反社と接点をもっても、即座に関係解消できるようなツールを整備しておくことも重要です。

これは、暴排条項(暴力団排除条項)といわれる契約条項で、すべての取引先に、
「万が一、暴力団ないしその関係者と判明すれば即座に契約を解除する」
という条項を挿入しておく、という手法です。

最後に、反社と接点をもってしまい、円滑な関係解消も困難で、トラブル化した場合の対処法です。

反社との関係解消は、経営問題ではなく、法律問題です。

そして、代表取締役社長以下役員全員、経営のプロであっても、法律や法的安全保障や有事対処については、ド素人です。

反社との問題を、取締役会で何十時間会議をしても、解決できるものではなく、解決するにしても、だいたい誤った方法論による解決を選択してしまいがちです。

経営問題ではない
「法的安全保障や有事対処が関係する法律問題」
は、即座に、弁護士や警察に相談し、支援を仰ぐべき、ということになります。

ちなみに、反社の問題を、取締役会で延々議論をした挙げ句、
「反社の言いなりになって、会社のお金を提供して、言いなりになる」
という意思決定をした企業があり、その結果、数百億にものぼる不正の資金を反社サイドに提供した企業がありましたが、当該企業の役員は、代表訴訟で敗訴し、役員個人として最大583億円もの賠償責任を負担することになった事例もあります(蛇の目ミシン、光進事件)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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