01744_イベントの様子を撮影した写真を宣伝広告(対外向け企業パンフレット)や広報(社内広報誌)で使用したいのですが、写り込んだご来場者様等本人(一般の方々です)の承諾が必要ですか?

一般的・原則的な議論としては、風景写真などで偶然に写りこんだものの、特段プライバシーに配慮が必要と思えないような場合、当該人物から逐一の承諾を採る必要はない、と考えられます。

ただ、写り込んだ状況や、社会的文脈に対応して、肖像権(プライバシー権としての肖像権)が作用し、この権利の処理のため、同意ないし承諾を得る必要が出てくる場合があります。

肖像権(プライバシー権としての肖像権) とは、むやみに他人に写真を撮影されたり、それを公表されたりしないように主張できる権利です。

プライバシーの期待が働く状況で、かつ、群衆の写真であっても1人ひとりが鮮明に特定できるような場合は、その各人に肖像権が成立する余地がありますので、原則として、その各人の承諾を得る必要が出てきます。

判例も、
「みだりに自己の容貌や姿態を撮影されたり、撮影された肖像写真を公表されないという人格的利益を有しており、これは肖像権として法的に保護される」
ことを明らかにしています。

例えば、政治デモやLGBT等のマイノリティグループの集会等の場合、参加者によっては参加したこと自体を内密にしておきたいと考えていることもありますから、同様の配慮が必要になる、というのは理解いただけると思います。

企業が主宰するイベントの場合、イベントの性質として、参加者が
「プライバシーを求める」合理的期待
が働くかどうかがポイントになります。

一般的な日用品に新作発表であればいいのですが、ダイエットのサプリや、抜け毛予防薬の新作発表といった、
「そこの場所にいることをあまり知られたくない」
という期待が働くような場合、事前の同意が求められると考えた方がよいかもしれません(ハイパーセンシティブな方もいるので、面倒であれば、全て同意を取っておいたほうがいい、という判断もあり得ます)。

同意を取る、というと、署名と印鑑をもらって一筆取る、ということをイメージされるかもしれませんが、別にそんな仰々しいことをする必要までもなく、実際はそれほど難しくありません。

「同意を、仕組み上、フィクションとして徴求する(後から文句をいえないような仕組みを通じて、同意を徴求しておく)ような設定」
を取っておけばクリアできるからです。

企業のイベント等の場合、主催者から予め
「撮影をする場合があり、撮影した写真は弊社の広報や宣伝広告に使う場合がありますので、写り込みたくない方は、参加を見合わせて下さい」
「イベント中に、撮影を行う際は、お声がけさせていただきますので、写り込みたくない方は、フレームアウトの指示にしたがっていただくようお願い申し上げます 」
との告知を出しておけば、クリア可能かと考えられます。

もちろん、ぼかしを入れて、
「鮮明に特定」の要件
を外すようなことも想定されますが、写真の出来栄えとも勘案しながら、修正することもアリです。

ただ、絶対
「ヤメといたほうがいい修正法」
というのもあります。

目線を入れることです。

これはプライバシー権の問題というより、おどろおどろしさが半端なく、別の趣旨の集会の写真になってしまうからです。

ま、このあたりは、常識でわかると思いますが。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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