01757_「社内報および社内イントラネットでの、新聞記事の引用をしたいのですが、新聞社への記事引用の許諾を取る必要はあるでしょうか?社長が露出した新聞記事の切り抜きをスキャンして引用したいだけなのですが、それでも許諾の必要はあるのでしょうか?」

新聞報道に関してですが、
「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」
は言語の著作物に該当しないと著作権法10条2項に規定があります。

他方、日本新聞協会は1978年5月、 
「最近の紙面における記事は背景説明の伴った解説的なもの、あるいは記者の主観、感情を織り込んだ記事が多く、紙面構成も高度な創意・工夫がはかられており、、独創的な紙面づくりが行われているのが実情である。したがって報道記事の大半は、現行著作権法に規定される著作物と考えるのが適当である」
との見解を示しています。

「記者の主観、感情を織り込んだ記事が多く」
「高度な創意・工夫」
などといわれると、
「それって、捏造記事であって、報道ではないんじゃないの?」
とツッコミたくなります。

そもそも、著作物って、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
ってことですから、事実を正確に報道する新聞記事に、思想や感情や創作が入ってはアカンやろ! ということにならないんでしょうか。

例えば、ある記者が、事実ではないにもかかわらず、
「(ある日本の方が)2回ほど朝鮮半島に出かけ、“朝鮮人狩り”に携わった」
などと記述したり、同様に、
現地で警官とともに若者100人を集め、労働力として日本へ送り、抵抗する者には暴力を使ったとする証言を紹介したり、
といった創作した虚偽の記事を書いて、これがある新聞社が新聞に掲載したとします。

もちろん、上記の
「お話」
は、正確な事実の報道ではなく、それこそ、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
なんでしょう。

ちなみに、この記事、
「創作性に満ちた著作物」
としてはさておき、報道としてはウソということが判明しちゃいました。

「創作性に満ちた著作物」
を事実の報道として公表した某新聞社は、記事全文を取り消し、掲載したことをおわびしておられます。

そういう意味で、あとで誤報として撤回して謝罪するような
「創作性に満ちた著作物」
としてのウソの記事であれば格別、まともな新聞報道は、事実を報道するでしょうから、
「新聞記事が『創作性に満ち満ちた著作物』である」
ともとれる日本新聞協会のご主張は、私としては、いまいち意味がわかりません(「新聞記事が、創作性に満ち満ちた、いってみれば、事実と程遠い、ウソが介在している」という前提なら理解できるお話ですが、ほんま、ようわからん話ですわ)。

このあたりは、大人の事情があるのでしょうがが、いずれにせよ、日本新聞協会の言っている内容は、法律家として読解する以前に、日本語として意味不明なので、私としては、理解を放棄し、ノイズとして捨て置きたい、と思います。

いずれにせよ、日本新聞協会の混乱しまくっているとしか評価し得ない話は放置・無視・軽視せざるを得ず、これをさておいて、法律解釈として客観的に考えます。

新聞記事で言いますと、
1 見出し
2 写真、
3 事実摘示部分(5W2H〔howとhow much〕)
4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分
とに分けられると考えますと、
「3 の事実摘示部分(5W2H〔howとhow much〕)」
については著作権が生じないと考えられます。

他方で、
「1 見出し」「2 写真」「4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分」
については、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
という著作物性要件を充足している限りにおいて、著作権の問題が生じる可能性がある、という言い方になります。

言い方を変えれば、
「新聞社が制作したから、すべてにおいて、創作性がある」
というのは早計であり、新聞社が創作した
「1 見出し」「2 写真」「4 観測や推測や解釈や評価といったコメントが掲載されている部分」
であっても、創作性のかけらもない、つまんない、陳腐なものであれば、著作物性が否定されることはあろう、と思います。

私個人の感覚であれば、一般の新聞の見出しは、あまり創作性を感じませんが、
「飛ばしの東スポ」
で著名な東京スポーツ新聞の見出しだけは例外です。

「マイケル、なめんとのか」
「マドンナ痔だった?」
「落合家(中略:男性器を意味する言葉が書かれています)丸出し放送」
「聖子輪姦」
「人面魚重体脱す」
「大仁田爆死」
「フセイン米軍に(中略:男性陰部の疥癬症を意味する言葉が書かれています) 大作戦」
「ダイアナ大胆(中略:女性の胸部を意味する言葉が書かれています)」
「阪神次期監督上岡龍太郎」
「宇宙人化石発掘」
「ネッシー出産」
「UFO大群、八王子に出現」
「宇宙人、ついに銚子を攻撃か」
「電線に止まったUFO」
「指原UFOおっかけ」
「前田敦子ヌード」
「今井絵理子議員(中略:下着を装着しない状況を意味する言葉が書かれています) 疑惑」
「広瀬すず、プロレス参戦」
といった、東スポ1面を飾った見出しは、ぶっ飛んだ
「創作性」
があり、品位は別にして、間違いなく、圧倒的な創作性が顕著にある、ど真ん中の
「著作物」
です(※これらの見出しの下には小さく、「?」「か」「も」「説」「絶叫」などの語句・記号が書かれ、うまいことお茶を濁しているのですが、この「お茶濁し」の見出し部分については、売店や新聞スタンドに陳列されるときには、折りたたんでいるので隠れいて、全体として、「見出しがあたかも事実であるかのように見える」という巧妙な計算を働かせています)。

以上のような著作物性の議論についてクリアして、引用をしようとしている新聞記事に著作物性が認めれる場合、社内報における論評のための引用という形式(著作権法32条)が認められない限り、当該新聞社の許諾を得る必要が出てきます。

なお、
「引用」
といえるためには、
1 他人の著作物を引用する必然性があること
2 かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること
3 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)
4 出所の明示がなされていること
といった要件充足が必要です(著作権法48条)。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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