01764_写真や画像で他社名、他社のマーク、他社製品名が写り込んだものを対外的な宣伝材料として使用することは可能ですか? 使用する際に注意することはありますか?

写り込み問題については、従前いろいろ議論がありましたが、著作権については、著作権法30条の2(平成24〔2012〕年6月20日に成立し,同年6月27日に公布された著作権法の一部を改正する法律〔平成24年法律第43号 〕)によって、立法的解決がなされました。


(付随対象著作物の利用)
第30条の2 写真の撮影,録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて,当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は,当該創作に伴つて複製又は翻案することができる。ただし,当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。
2 前項の規定により複製又は翻案された付随対象著作物は,同項に規定する写真等著作物の利用に伴つて利用することができる。ただし,当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。

「まあ、概ね、写り込みについては著作権侵害にしませんから、安心してね」
というメッセージです。

文化庁のウェブサイトにおいては、OKの例として、

  1. 写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合→◯
  2. 街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけでなく,ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合→◯
  3. 絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載する場合→◯
  4. ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を,放送やインターネット送信する場合→◯

が挙げられています。

妥当かつ常識的な立法的解決だと思います。

「ただし,当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。」
については、悩ましいところですが、こちらも文化庁のウェブサイトにNGの例として、

  1. 本来の撮影対象として,ポスターや絵画を撮影した写真を,ブログに掲載する場合→✕
  2. テレビドラマのセットとして,重要なシーンで視聴者に積極的に見せる意図をもって絵画を設置し,これをビデオ収録した映像を,放送やインターネット送信する場合→✕
  3. 漫画のキャラクターの顧客吸引力を利用する態様で,写真の本来の撮影対象に付随して漫画のキャラクターが写り込んでいる写真をステッカー等として販売する場合→✕

などが挙げられています。

他者のロゴや製品名が商標として登録されていて、これが写り込む場合ですが、こちらは商標権の問題になりますが、ただ、冷静に考えて、商標権侵害になるかどうか法的に分析しておくべきです。

商標権の侵害は、
「商標権者に無断で、登録商標を、指定商品等の範囲で使用した場合」
に問題となります。

「写り込む」
という事例においては、
「指定商品等の範囲で使用した場合」
に該当しないことがほとんどであろう、とも思われます。

写り込み事例においては、偶然性・偶発性による使用というケースですから、
「登録商標を指定商品や指定役務等に使用した」
という侵害事例の本来的ケースからかけ離れているからです。

他方で、写り込みが単なる方便で、その本質的意図が、登録商標を商標権の範囲内で使用していると認定される場合もあります。

要するに、
「偶然の写り込みだから大丈夫」
という安易な考え方で割り切るのではなく、あくまで、
「登録商標を、指定商品等の範囲で使用した」
といえるかどうかをケース毎に判断することが必要です。

どうしても、気になるようであれば、画像修正ソフト等を使用して、商標とわからないようにする工夫が考えられますが、動画などではほぼ困難なので、法的な理屈付けが可能かどうかを検討することになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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