01767_11歳からの企業法務入門_0_序:11歳でも理解できるように咀嚼することの重要性

1 「企業法務」という特殊な「サービス」の「ユーザー」である経営陣は、「経営の専門家」であっても、「法律の専門家」ではない

経営者は、経営の専門家であっても、法律の専門家ではありません。

加えて、経営者を含む多くの日本の成人は、機能的文盲の状況にあり、漢字がたくさんの難解な長文のカタマリを提示しても、象形文字として、画像認識しか出来ず、その意味が理解できません。

他方で、法律の条文、思考枠組、運用メカニズム、限界領域の解釈、運用相場観、すべてが、腹が立つくらい、難解で高尚で、一般人の理解を拒絶します。

2 (「法的状況」の伝達ターゲットである)経営陣の想定知的年齢・精神年齢は11~12歳

ビジネスパースンの想定精神年齢を11、12歳として設定し、その程度の精神年齢に語りかけるくらいに咀嚼すると、東芝で発生した実際の悲喜劇のように、
担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していない
という事態を招きません。

「ドラえもん」に出てくる野比のび太くんや、
「妖怪ウォッチ」に出てくるケイタくんや、
「ポケモン」主人公のサトシくんですら、
「なるほど」
「そういうことか」
と感心して食いつくような内容・本質が、
しびれるくらいわかりやすく語られていないと、
リスクを伝えたことにならない、ということです。

リスク管理の実務担当者は、そのくらい伝える力、すなわち、
「データ」から「リテラシー」を抽出し、
「ストーリー」に仕立てて、
ビジネスパースンが理解し、
心に刺さり、実感として体感できるまで、
リスクを提示する能力
を、磨くことが重要となります。

3 11歳は、経営者の想定精神年齢の最下限

11歳というのは意味があります。

10歳程度では、取引や金銭といった経済活動の基本概念が今ひとつ理解できておらず、買い物もおぼつかない可能性があります。

しかしながら、11歳になれば、小遣いをあげれば、買い食いをしたり、漫画やゲームを買えますし、買い物のお遣いを頼んでもミッションクリアできる程度の知能はあります。

企業活動やビジネス活動といっても、所詮は、金儲けです。

経営者は、金儲けさえできれば、誰でもなれるわけですし、医師や弁護士や教師や公務員と違い、経営者になるには、学校も試験も資格も何にもいりませんし、金儲けや金勘定以外の常識や知性の実装度合いについては、制度的担保がまったくありません。

経営者の側でも、想定知的水準をあまり高度に設定されて、意味不明な難解な法律用語をお経のように唱えられても、はた迷惑です。

とすれば、経営者の想定知的精神年齢については、買い物や金儲けが出来る最下限の知的水準想定にしておけば、絶対、話が伝わるはずです。

のび太くんも、ケイタくんも、サトシくんも、勉強嫌いであり、試験が不得意であり、バカといえばバカです。

ただ、そんなバカの彼らでも、損とか得とか、カネが増えたとか、カネがなくなった、とかそういう、経済的な欲得についての感受性と常識は実装しています。

また、社会的知識はないにしても、大人がどんなもんか、社会がどんなもんか、どういう競争秩序で運営されているか、くらいはぼんやりと判る程度の知識はあるでしょう。

ですので、想定精神年齢11歳の小学生が、
「なるほど! そういうゲームのロジックとルールになっていて、こうやったら負け、こうやったらうまいこといくんだ」
という形で企業法務について教えられれば、
「経営者に刺さるプレゼン」
ができる、ということになります。

欲や得になることには相応の感受性があっても、小難しい話は大嫌いで、我慢が苦手で、欲に素直で、退屈に感じるとすぐに逃避する、
「どうしょうもないクソガキ」
でも、理解できる程度に言って聞かせようとすると、本質を理解した上で、トーク力を磨く必要があり、企業法務の本質を掘り下げ、プレゼンを磨く、格好の訓練になるはずです。

そういう意味で、
「11歳」
というプレゼンターゲットの知的精神年齢設定にした次第です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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